「カル」

  Tell Me Something

 (2000/11/13)


ヤバい闇の世界ってみんな大好き

 最近、マスコミを騒がせたし僕もすごく関心あった事件というと、何と言っても英国人元スチュワーデス失踪事件にとどめを刺すんじゃないかね? 金髪美女が事件に巻き込まれた!その陰に六本木の夜にうごめく欲望地帯!…被害者やその家族の人には申し訳ないけど、言っちゃなんだがあまりにコマが揃いすぎて怖いくらい。事件の全容どころか、キーワードをチラッと聞いただけでも燃えてくる(笑)。だって、それぞれのキーワードを単体で見てみたってグッとくるんだよ。「金髪」「スッチー」「失踪」「六本木の夜」…。一個だけでも何となく「ン?」とくるようなフレーズなのに、こうも集まっちゃうと…く〜っ、たまらん(笑)!

 上品ぶっても始まらないからハッキリ言わせてもらうけど、僕はこういうアブない事件のニュースって大好き。あと、ラブホで殺人とか情痴の果ての殺人とか全裸殺人とか、それもバラバラ殺人とかだと申し分ない。つまりラブホ全裸情痴バラバラ殺人だと完璧だよね(笑)。太陽神戸三井トマト銀行じゃないって(笑)。

 不道徳だって?不謹慎だって? いかにもその通り。ではお伺いするが、あなたはこういう事件の話はお嫌い? いやいや、ウソを言ってはいけないね。しかめ面をするあなたこそ、こういう話が飯より好きなんじゃあないかい?

 人間ってこういうヤバくって暗い闇みたいなものに、知らず知らずのうちにあこがれてるところあるんじゃないか? 昨年のスタンリー・キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」が突いていたのもそこだろう。フツーの人トム・クルーズが、自分の知らない闇の世界にちょっとスケベ心出して、よせばいいのに大した覚悟も度胸もなく首突っ込んで…。あの「2001年宇宙の旅」の巨匠が、その来たるべき2001年の直前、自分の遺言とも言うべき作品で、何だかんだ言っても人間のそんな覗き趣味やヤジウマ根性をテーマに選んだってのはすごく象徴的かもしれないよね。

 やっぱり人間はヤバいことに凄く関心がある。ただ、あんまり大っぴらに言えることじゃないし、世間体もあるからみんな抑えてるんだ。それが堂々と見ても大丈夫ってくれば、みんな絶対見たがるよ。そのための言い訳を欲しがってるだけなんだから。

 あの良心的な感動作「八月のクリスマス」の主演コンビが再共演を果たす折り紙つきA級扱いの娯楽作品「カル」なら、そんなお上品で知的(笑)な映画ファンでも、もちろんいいトコのお坊ちゃんお嬢ちゃんの方々でも、何の恥かし気もなしにご覧になれますよね。

 

謎めき美女シム・ウナちゃんにクラクラ

 何だか薄汚ねえアパートの一室に、一人の男が入っていくところから物語は始まる。ところが、やがてこの男はすっ裸で意識を失い、手術台みたいなところに寝かされて登場するから気色が悪い。イヤな予感は的中して、ナゾの人物が手だけ登場してメスを握り、寝ている男の腕をギコギコ切り始めるではないの。案の定、切り離された腕をどで〜んと台の上に置いて、どうだっとでも言いたげに見せつけるショットが次にくる。このショットこそが、「カル」という映画を最も雄弁に物語ってるな。どうだい、気色わりィだろ?

 一方で、疲れた表情のハン・ソッキュ刑事が、査問会みたいなところでツルシ上げられている。どうも、ある有力者からワイロを受け取っていたと疑われているらしい。母親が重病で入院費用がかさみ、どう見ても刑事の安月給で払い切れる額じゃなかったのだ。みんながみんな西武の堤みたいに金持ちでやりたい放題って訳じゃないんだよ。結局それも容疑にとどまったらしくパクられはしなかったものの、母親は看病の甲斐もなく死んじゃうし、同僚からは白い目で見られるしサンザン。

 今夜も不良少年の飛び降り自殺現場に着いてみると、同僚刑事がからむからむ。うるせえなこの野郎てめえやるかボカスカって、これじゃあ捜査にならない。でも待てよ? ハン・ソッキュ刑事や他の連中は知るよしもないが、ここは映画の冒頭に出てきた汚ねえアパートじゃないの?

 さて、連日冷たい雨がそぼ降るソウル。高速道路の脇に停められた車の中に、黒いゴミ袋を発見。袋の中味はバラバラ死体がゴロゴロ。さらにスーパーマーケットのエレベーターの中にも、さりげなく黒いゴミ袋。よせばいいのに躾の悪そうなガキがフザケてるうちに、袋が破けて血とバラバラ死体がドバ〜ッ。慌てふためく買い物客がジタバタするうち、若いネーチャンが死体のそばにぶっ倒れてキャ〜ッとお約束の大パニック。さらにさらに、早朝の空き地をほっつき歩いてたアンチャンも黒い袋を見つけるが、ネーチャン悲鳴上げるシーンは見てて楽しいけど、野郎が悲鳴あげても可愛くないから以下省略。このへん、この映画はハッキリ割り切ってつくってて爽やか(笑)。

 こうもバラバラ死体がゴロゴロ出てくると、警察も黙っているわけにいかない。ハン・ソッキュ刑事は汚名挽回の意味も込めて、この事件の特捜班のリーダーに任命される。彼はお仲間のチャン・ハンソン刑事と一緒に捜査を始めるが、この3つのバラバラ死体、なぜかこいつの腕はあっちに、あいつの脚はこっちに、そいつの心臓はどっかに…てな感じにチグハグにカップリングされているのが妙なのだ。また、この死体の切り方がうまいので、医学か解剖学の経験のある人間がやったらしいことが分かる。確かに刃物の扱いって慣れてる奴には適わない。何年か前に友人たちと貸別荘借りて遊びに行った時、ケンチン汁つくろうとしてニンジンを切っていた俺の包丁さばきのマズさにみんな絶句してたもん。でも、目玉焼き焼かせたら俺の右に出る者はいないぜ。女ごときにゃ負けないね。男をナメんなよ(笑)。

 そんなどうでもいいことはさておき、中の一人の歯に特殊な治療がほどこされていることから身元が割れ、なぜかそいつの身元引き受け人となっていた女が分かる…それが博物館の職員シム・ウナちゃんだ。

 ウナちゃんに他の気色悪い2つのバラバラ死体見せたら、何と3人とも知り合いだって言うんだよ。過去に付き合った男ばっかりだと…。ウナちゃんの体を通りすぎた男たちか! く〜っ、俺も通りすぎたい〜っ(笑)。まぁ、そんな訳で(どんな訳だ)犯人は彼女の身の回りにいる可能性が大。にわかに警察側も色めきたってくるわけよ。

 そのうちウナちゃんにフラれてストーカーやってた男ってのが捜査線上に浮かんでくる。こいつ胸クソ悪いことにウナちゃんの部屋に無数のビデオカメラ取り付けて、盗撮やってるんだよ盗撮! 当然トイレ盗撮とかやってるのかねぇ。俺、いくら好きな女でも便所は見たくないな。おフロはいいね!ぜひ見たい!これは健康的な男の欲求でしょう(笑)! でも見てるより、やっぱり一緒に入るほうがいいな…って、そうできるんなら誰も盗撮なんかしないって(笑)。とにかくウナちゃんのヌードは、きれいなうちに見たいですね(笑)。神田うののは見たくないです(笑)。

 そんなこんなしてるうち、ショートヘアでボーイッシュな感じのシム・ウナちゃんのお友達で女医のヨム・ジョンアちゃんが心配してお家に行くと、ウナちゃんヤバいことになってたりする。ちなみに僕はショートヘアの女って好きですよ。可愛いけど妙にエッチでさぁ(笑)。で、ハン・ソッキュ刑事はウナちゃんを自宅に匿うんだけど、その時に自分の拳銃を彼女に護身用として渡すんだな。大丈夫なのか?こんなことして。そういやハン・ソッキュ刑事、現場保全が捜査の鉄則だと思うんだけど、勝手に証拠はいただいちゃうわ現場はぶっ壊すわ、映画全編にわたってもうやりたい放題。これじゃ汚職刑事じゃなくてもクビになりそう。しかも、死体はまだまだゴロゴロ出てくる。高速道路におなじみの黒いゴミ袋が置いてあるところにチオビタ飲んでそうなオッサンのトラックが突っ込んで、破けたゴミ袋から“こてっちゃん”みたいのが吹っ飛ばされて下の道路にバラバラ落ちてくる。たちまち下の道路は大混乱で玉突き何重衝突だかわかんないほどの大パニック。また、いつの間にかハン・ソッキュ刑事も何者かに狙われたりして、何となく彼女のことを疑ってきちゃうんだよね。

 疑うんだけどソソられちゃう。一人身のハン・ソッキュ刑事、きっとタマってるだろうしね。韓国エステでヌイてもらうヒマも金もなさそうだし。で、彼女と親しくなるうちに身の上話にもなってくる。彼女は実は有名な画家の娘だったんだよ。この画家が芸術家にありがちな変わり者で、今はどっかに行ったまま失踪中。彼女自身、昔は画家志望でパリに行ったこともあった。そんな彼女の実家を訪ねてみると、今は草茫々でガランとした空き家。そこで彼女の口からポツリポツリと語られるトラウマ話。あまりに重たくって、タマりにタマった自分のタマキンよりズッシリ重たいウナちゃんのお話に、さすがのハン・ソッキュ刑事もウ〜ンとうなってアソコも萎える。

 で、真犯人ってどうなっちゃったの?

 

ハン・ソッキュ脚本厳選神話は本当か?

 大ヒット作「シュリ」に引き続いてのハン・ソッキュ主演作で、これまた大ヒット。今まで韓国じゃ猟奇殺人ものなんてタブーだったから、なおさら話題になったらしい。脚本を厳選してハズシなしというハン・ソッキュ氏の不敗神話が、またまた更新して男を上げたとか。なるほど、こっちでも話題だもんねぇ。この題材で「八クリ」純愛コンビ再共演なら、確かに見たくなるわな。

 監督のチャン・ユニョンなる人、この前にはやっぱりハン・ソッキュ主演で「接続/コンタクト」なる映画撮ってるんだね。これ、パソコン通信とかをからめたラブストーリーものとか。しっかし電子メールとかネットとかで女と付き合える奴なんているのかねぇ?いたらかなり運のいい奴じゃないの?どんな奴か顔が見たい(笑)。ともかくそんな新しがりやの人だから、今回韓国初のギトギトグチャグチャ猟奇サスペンス映画つくろうとしたんだろうねぇ。

 映画の冒頭から中盤までは、ユーウツな雨がシトシトシトシト…ズ〜ッと降ってて、イヤ〜な気分になってくるんだよ。で、このムードって何だって思ったら、明らかにあのデビッド・フィンチャー監督の「セブン」、あのムードのパクりなんだわな。な〜るほど、後味の悪さは確かに「セブン」から受け継いでるわい。

 だけど、途中でお話がよく見えなくなる。…っていうか、見えないようにしてるんだろうけどね。かなりムチャな話に見えて、結末などは何だよそれって騒ぎたくなる。これでツジツマ合ってるのかなぁ? 脚本は監督を含めて全部で5人がかりで書いてるんだから、一応スジは通ってるはずだよなぁ。でも、何か納得できねえんだよ。ホントかよ、これ?って感じ。

 脚本厳選のハン・ソッキュ先生にしては、このホンってそんないい出来なの?って言いたくなる。5人がかりって言ったって、たぶんナゾの引っかけだとか仕掛けに手間がとられてるんだろうね。だって、見た後に明らかにダマされた気がしちゃうよ。もちろん、よく出来たミステリーで、ラストに「やられた」ってダマされることはある。だけど、それは普通「お見事!」って言いたくなる気持ちいいダマされ方だよな。よくやったなって。だけどこの「カル」に関しては、フザケんなよ〜って少し怒りがこみあげてくる。何か看板のアガシの写真にひかれてフラフラと韓国スナックに入ったら、店内は真っ暗でジャンジャカ注文されて、気がついたら女はブサイクなオバハン揃いでいつの間にか金もボッタクラれてるみたいな感じ。あるいは、なんだウブな奴と思っていたら意外とスレてるじゃないかアソコ真っ黒って感じか(笑)。つまりダマしのためのダマしなんだよ。だから映画としてのコクっていうか面白みなんか二の次で、ただひたすら結末部分でビックリさせるためのダマし。映画の冒頭で、ハン・ソッキュ刑事が汚名を着てやさぐれてるのなんか全然生かされてない。また、途中にハン・ソッキュ刑事が気持ち悪い目にあう場面があって、それなんか単なる夢でしたってオチで終わりなんだけど、何だか似たような趣向のシーンあったな…って思ってたら、それって「シュリ」の悪夢のシーンのパクりじゃねえか(笑)。セルフ・パロディやってどうするハン・ソッキュ(笑)。これじゃ、またかよ…って気になっちゃうよねぇ。

 この作品の英語題名は"Tell Me Something"って言うんだけど、「何とか言ってくれ」ってのはこっちが言いたい台詞だわな。

 おそらくハン・ソッキュの脚本厳選ってのも、今回だけに関して言えば韓国初のタブー破ったギトギトもののビックリ・サスペンスっていう、パイオニア精神に発揮されたんだろうね。だって、これ全体で見ると大した話じゃないだろ? まだ、よく分かってないけど。

 結局、先に語ったように、冒頭でこれみよがしに血まみれの腕がどで〜んと出てくるシーンで、すべてが言い尽くされている映画なんだよ。まぁ何度も言うけど「八クリ」コンビがこういうサスペンスで再共演っていうスター映画=娯楽映画としてのパッケージングの良さはあるけどね。そういう楽しさはある。実際のところ前半はお肉さえ出てこなければ、結構謎めいてていい感じではあるんだよ。

 まぁセンセーショナルなのはお肉とシム・ウナちゃんの可愛さだけ。でもせっかくこういう話だったら、せめて彼女のシャワー・シーンぐらい欲しかったね(笑)。という訳で、ここで一句…。

 カル(ビ)の肉、質より量で胸やける

 失礼いたしました(笑)。

 

 

 

 DAY FOR NIGHT Korean Restaurant

 

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