Let's Get Fever !!

featuring "Forever Fever"


 

 東京ファンタスティック映画祭

 前夜祭・アジア映画深夜秘宝館でフィーバー!

 「フォーエバー・フィーバー」でフィーバーの夜 !

  The Night at the Tokyo Fanta.

 菜穂美

 by Naomi

 

 なんといっても、お祭りのような雰囲気が楽しいのが、映画祭だ。特にオールナイトともなれば、独特の連帯感も生まれて、観客のノリがいいのが最高。今回は、オープニングはダンス☆マンの歌で始まった。「That's The Way」とか「Just The Two Of Us」「I Believe in Miracles」といったソウル、ダンスヒットの名曲を馬鹿馬鹿しいけど、ゴロが妙に合う替え歌にして歌ってしまっている。ダンス☆マンはかのモーニング娘の「Loveマシーン」の振り付けなども担当しているとあって、楽しい演奏だったが、ファンタのオタク度の高い客層とはちょっとミスマッチがあったようで、この時点では客のノリは今一歩で気の毒だった。しかし、70年代ダンスミュージックのフェイクでオープニングを飾ったのには訳があった。それは、オープニングの映画のテーマだったからである。

 多分、今回のオールナイトに参加している観客の大部分は、2本目に上映される石井輝男の問題作「地獄」か、3本目のマサラムービーの怪作「ボンベイtoナゴヤ」が目当てだ。だから、客層は、アングラ映画が好きな人か、インド映画のファンである。シンガポール映画、なんじゃそりゃ、である。シンガポール映画が日本に入ってきた実績なんてこれまでなかったわけだし、先入観もほとんどない。逆に、期待している人なんて誰もいなかったと思う。客席も、なんだか入りが悪く、空席も目立つ。

 開幕を宣言した小松沢プロデューサーが紹介したのが、今回の映画の配給担当のお兄さんだった。金髪の若そうな兄ちゃんだが、なんと「フォーエバー・フィーバーの監督グレン・ゴーイと同い年、35歳だという。その年代だと、あの「サタデー・ナイト・フィーバー」のブームをリアルタイムで覚えているはずだ。壇上でやたら熱く語っている。そして、何やら、この映画は「Shall We Dance」を全米で配給したミラマックスのチームが、アジア映画第2弾として配給することが決まっているとのこと。しかも、日本では、あのお洒落な恵比寿ガーデンシネマで上映するらしい。そんなバカな!でも、なんとなく期待できそうな気がした。

 シンガポールのダンス映画であるということ以外ほとんど予備知識なしで臨んだのだが、この映画は最高に良かった!

 物語だけを追うと、ありがちなサクセス・ストーリーに思える。だけど、この映画には、それだけでは終わらない「何か」がある。まず「サタデー・ナイト・フィーバー」とブルース・リーは本当にこの時代、世界中を席巻したんだな、と実感する。ブルース・リーの「ドラゴンへの道」のすべての振りと台詞を覚えているというホック。そんな彼が映画館で「サタデー・ナイト・フィーバー」もどきの映画を見に行ったとき、なんとジョン・トラボルタ(もちろん、本物ではなく、全然似ていない偽物)が画面から出てきて彼に話しかけてしまうという展開となる。

 主人公のホックはボンクラでなんの取り柄もなかった。が、この映画のテーマは、「どんな人にも、誰にも負けない取り柄がある」というものだ。彼を支える、偽トラボルタ。幼なじみの少女、仲間たち。美しいジュリー。泣かせるのが、優等生だったはずの弟や不細工な妹との兄弟愛。みんなとても一生懸命で輝いている。最近の映画では観られないような、純粋さがある。

 その輝きが最大限に発揮されたのが、初めてホックがディスコに足を踏み入れたとき。ディスコなんて行ったことないし…と後込みをするホックを、偽トラボルタが励ます。美容院で髪をセットし、いろんな派手派手しくて悪趣味な服を試着しまくった上、最終的にはキラキラ光るシャツ、ぴちぴちのパンツでキメる。あまりの強烈なカッコウに、場内から失笑が漏れる。6時間かけてセットしたパーマ頭なんて、もうギャグとしか思えなくらいなんだもの。ああいう頭のオバサンっているよね、って感じ。

 しかし、ホックがひとたびフロアで踊り始めたら、もうパンテオンの中は大喝采、驚きとも歓びともつかないため息が漏れる。「サタデー・ナイト・フィーバー」でトラボルタが見せたのと同じあの天井を指さすポーズから始まる10分間は、まさに至福の時間だ。ずっとホックには踊っていて欲しいと願ったし、会場ではダンスに合わせて手拍子が鳴り響いた。このとき、渋谷パンテオンは、巨大なディスコと化した。

 ホックのことをダサいやつだとバカにしていた彼の友人たちも、そして私たち観客も、目を瞠った。ダサくても、一生懸命な人間はどこまでも輝いて見えるのだ。映画もそうだ。あか抜けていなくても、一生懸命、丁寧に作られたこの作品は、キラキラして眩しいことこの上ない。

 70年代。今から見るととてつもなくダサい服装や振り付けも、あのときは最先端だった。ダンスコンテストでは、もちろんトラボルタと同じ白いタキシード。甘酸っぱい青春のなつかしい匂いがする。ストレートで、楽しく、笑って泣ける。インド映画を初めて見たときのような新鮮さを感じる。この楽しさは、あの時代の「サタデー・ナイト・フィーバー」やブルース・リーのように、全世界的に通用するものだからだ。熱くて、爽快で、涙と笑いが満載。これぞ、エンターテインメントだ!「映画」ならではの楽しさだ!

 いやぁ、一発目にいきなりすごいものを観てしまった。オールナイト興業なんて体力的な問題もあって、滅多なことでは見に行かないのだが、来て本当に良かった。超ラッキーだ。

 映画が終了し、みんなロビーに出る。私は一人で来ていたのだが、たまたま数人の友人も見に来ていた。深夜の2時だが、みんな、思いがけずに楽しくて爽快な映画に出会えた歓びで上気している。興奮している。踊り出したくなってしまう。いきなりこんなに最高の気分を味わせてくれるなんて、素晴らしいプレゼントを贈られたような気持ちだ。「いや〜楽しかったね、もうこれだけで満足だよね」と口々に語る。

 これほどまでに素敵な作品に出会えたら、もう他の作品なんてどうでもいいやという気持ちにすらなってきた。事実、この日のオールナイトの他の作品でも、いや、ファンタスティック映画祭で上映された他の作品でも(私はそれから9本も観たのだが)、これほどの興奮、熱い気持ち、カタルシスを与えられることはなかったのだった。

 

(これは付録です)

 後日、またこの興奮を味わいたくて試写に潜り込んだ私は、プレスキットをもらった。これがまた、レコードジャケットの形をしているという凝った作りになっている。しかも、昔レコード店でレコードを買ったら入れてくれる、ビニールの袋に納められているのだ!これはレアアイテムだ。映画館でも、この形のパンフレットが売られるのかな?

 

菜穂美東京都にお住まいの菜穂美さんが主催するホームページは圧倒的なコンテンツの量を誇っており、その映画評はとにかくひたすら熱いです!

 

 菜穂美の映画の小部屋 Naomi's Favorite Movies & Things

 http://member.nifty.ne.jp/p-chan/ 

 


 

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