「バーティカル・リミット」

  Vertical Limit

 (2000/12/04)


わが「バーティカル・リミット」は富士山5合目

 女ってのは歳取ってから、より生きいきしてくるもんだろうか? 今回のっけから、歳くった男には耳の痛くなるキツ〜イ言葉で始まったけど(笑)。

 いや、何を言いたいかと言うと僕の母親の話。この人、毎週何かって言うと山登り行ってるんだよ。でも若い頃からやってるのかって言うと実はそうじゃない。僕が大きくなって手がかからなくなった頃からだから、40代に入ってからじゃないか?

 何となく新聞に掲載されてた登山の会みたいのに応募して、ちょっと出かけたのがはじまりだったが以来病みつき。それでも最初は高尾山みたいなとこへ行ってたから、かわいいもんだった。ちなみに、東京圏以外の方には高尾山なんて言っても分からないだろうから説明すると、東京都にある唯一有名な山のこと。地方の方には東京都に山なんかあるの?と言われそうだが、あることはあるんですよ。だけど、ご想像の通り大して高い山じゃない。それでも足の便はいいし手ごろだしで、都民はみんな一度は行ったことあるんじゃないか?

 で、いつまでもその位のもんだろうとタカを括ってた。お山にお友達と登って、おにぎりでも食って楽しんでるんだろ…とか。ところが、これがまるっきりアサハカな考えだったのだ。ある日、母親は山登りのお仲間と一緒にスイスへ行って、マッターホルンか何かに登っちゃった! マッターホルン? それにそもそもヨーロッパなんて行くような柄じゃなかった。海外旅行そのものだって行くとは思えなかったんだから。事ここに及んでようやく僕と父親は、この山登り熱がちょっとやそっとじゃない本格的なものだと思い知ったわけ。いや〜、好きこそモノの上手なれとは言うけれど。

 その点、親父なんか情けないよ。母親が山に出かけてる土曜日曜なんか、決まってテレビでゴルフ観戦、プロ野球観戦、マラソン&駅伝観戦。スポーツ好きったって見るほう専門だもんね。そういう息子は映画とインターネット三昧じゃもっと悪いぜ(笑)。男どもはどいつもこいつも情けない。

 しかし、これで母親がインターネットにでも興味持ったひにゃ、絶対に山のページやるってきかないはずだ。それだけは勘弁してほしいので(たぶん、そうなればつくるのは俺だ。)、インターネットはクラい不健康な奴がやるものというイメージを盛んに植え付けてるところ。それでも知り合いが始めれば、どうなるか分かったもんじゃないぜ。

 それに引きかえこの俺は、そもそも山は向いてないみたいなんだよね。実はガキの頃はこの母親に連れられて、いろいろ旅行に行ったりもした。その頃はガキだからとにかく元気に溢れてて、トットコトットコ一人で走って行っちゃって、よく怒られていたっけ。

 ところが、そんなに元気いっぱいだった子供の頃から、どうしても駄目だった場所があるんだよ。それが、何を隠そう霊峰・富士!

 バスで5合目まで連れて行かれて、一休みしてからアタックするんだけど、船に乗ろうが何に乗ろうが、寝不足しようがゲロひとつ吐かずに平気な顔のこの僕が、この5合目から登り始めたとたんに猛烈に気分が悪くなり、足が重くなったのだ。もうフラフラで一歩も歩けない。息ができない。苦しくって苦しくって、身動きできずに下山するハメになった。言っとくけど今の話じゃない、元気が有り余ってる子供の頃だよ。

 シャクだったんで…というか、単にその時は体調不良だったんだろうと思い、また翌年の同じ時期に母親と登りに行った。ところがまるっきり同じ事が起きたんだね。で、かわいそうに母親はいたって元気なのに、出来の悪い息子のせいで再び富士山登頂を逃した。

 それから何年もたって、もう僕なんか待たずに勝手に一人で富士山登ってきた母親。それを考えると、やっぱり俺は山には向いていないのだと痛感せざるを得ないね。

 つまり富士山5合目こそ、僕にとっての「バーティカル・リミット(酸素ボンベなしで登頂できる限界)」ってことなのかねぇ(涙)?

 

山好き兄妹を襲ったトラウマ

 あれぇ?俺、間違えて「M:I - 2」見ちゃったのかな?…なんて間違えるバカはいないか?俺は間違えちゃったけどね(笑)。そんなそっくりフリークライミング場面から映画はスタート。ただ、こっちは一人ぼっちじゃなくって父親と息子娘の3人で登っているんだね。その兄貴のほうが「プロポーズ」でサンザンな目にあったクリス・オドネル、妹のほうが「エンド・オブ・デイズ」でこれまたサンザンな目にあったロビン・タニーってわけ。親子共通の趣味が山登りってんで楽しげにやってはいるけど、見ているこっちはヒヤヒヤもの。よせばいいのに妙にリラックスしてるから、こいつらイヤだよな。

 んぁムッスメさぁん〜にゃよっく聞ぃ〜けよっとぉぉ…お〜いタニー、この歌の題名分かるかぁ?なんてオドネル調子こいて曲名当てクイズなんかやってるけど、何しろ選曲が古すぎ。童顔のくせにオヤジ趣味のオドネルに妹タニーはついてけなくてシカト。そんなたるんだ気分に油断があったかなかったか。突然、上から初心者のクライマー二人が手を滑らせて落っこちてきて、オドネル親子のザイルに引っかかったからたまらない。親父が落ちるオドネルが落ちるタニーが落ちる。タニーがガッチリ岩の割れ目にかませてたカムがあったからいいようなものの、下から初心者クライマー、親父、オドネル、タニーの順で、このカムひとつにぶら下がっているような状況になっちゃたんだね。

 しかも、さすがにこれだけの人数支えるにはカム一個じゃムリ。そのうちハタ迷惑な素人クライマー二人は勝手に落ちてったが、それでもカムはいつはずれてもおかしくない状態だった。これはもう万事窮すと悟った親父は、オドネルに自分をぶら下げてるザイルを切れと頼む。そりゃオドネルつらかろうよ。でも、実の親父を見殺しになんか出来ないと拒むものの、親父に「妹を死なせてもいいのか」と問われればザイルを切らずにおれない。妹が泣き叫ぶ声を耳にしながらザイルを切ったオドネルは、理由はともあれ実の父親を殺した男になってしまったわけ。そして幾年月…。

 ここは世界のクライマーが夢見るK-2の近く、パキスタン領内とはいえインド国境が目の前なので一触即発。だが、欧米の登山家たちが札ビラ切れば、上の命令でこんなボンクラ野郎どものパシりやらされる軍人どもはいいかげんクサってる。そんな山ん中にクリス・オドネルがいた。彼はいつもの甘ちゃんマスクが心無しか曇って、無精ヒゲとともにショボ〜い感じを醸し出してる。今は野性動物の写真家となった彼、例の親父を死なせた事故がトラウマになって、もう山登りからは足を洗い腰抜けになったともっぱらのウワサだ。だが、何だかんだと山との縁はなかなか切れないらしい。

 ところが縁は異なもの。近年ではすっかりクライマーとして名を上げてきた妹タニーが、すぐ近くのベースキャンプに来ていると言うじゃないか。それで顔出さないのも水くさいと足を運んでみたものの、その表情は複雑。

 彼女がここに来たのは、新興航空会社社長、青年実業家にして冒険家という触れ込みのビル・パクストンのプロジェクトに参加するため。何かって言うとすぐ気球とかに乗りたがるどこかの誰かによく似た男のパクストンだが、その似た男同様、このパクストンの冒険話にはどうもウサンくさいところがある。それに、冒険を金で買おうというのがミエミエの態度が、ちょっと良識ある山男たちにとっては鼻つまみなんだよな。そういや、あのコカイン漬け角川春樹も野性号とかいう船で冒険航海よくやってたっけ。まぁ今回はパクストンがK-2のてっぺんから自社の第1便飛行機に手を振るという趣向で、この超ミーハー企画のために多くのスタッフが金でかき集められてるわけ。そんな中に自分の妹がいるってのが、何となく面白くないオドネルだった。

 案の定、久々の彼女との再会は最初は友好的だったが、すぐ何とも言えない険悪な雰囲気になる。結局何だかんだ言ってこの妹タニーは、兄オドネルのことを、自分が助かりたいから父親を殺した腰抜け野郎扱いしたがってるんだよね。そんなこと言っても自分だって助かったくせに。他人のせいにしておけば、自分だけは善人でいられると踏んでいる何とも根性の曲がったクソ女なのだ。前もこの女のおかげで「エンド・オブ・デイズ」でもシュワちゃんがひどい目にあったのに、懲りずにまたノコノコ正月映画に出てきやがって。この瞬間から僕にはこんな女早く死ねとしか思えなくなったんだけど、それじゃあこの映画は成立しない(笑)。だが誰か「ホワイトアウト」の松嶋菜々子とこの女を、二人で束にして雪山の谷底に突き落とす映画つくってくれれば、俺はすぐにでも喜んで見にいくぜ。

 イヤ〜な気分になったオドネルだったが、タダ飯も出るし面白パーティーもあるし、もしかしたら久しぶりに女にありつけるかと、ちょっとだけお邪魔させてもらうつもりで居座る気配。そのへん、それでなくてもプライドなさそで優柔不断っぽい彼ならでは。だからいつでも女にナメられるんだヨ(笑)。

 そして話題の主パクストン登場。何だかピカピカテカテカって感じで調子いい奴。登頂前夜祭って感じのパーティーでも派手にブチ上げる彼。何せエヴェレストも登った世界最高のクライマーも味方についてるんだしな、わっはっは。そう、そんなトップ・クライマーのエヴェレスト野郎だって金積めば動く。

 ところがそんなお祭り気分をブチ壊して、一人の男が現われた。長髪でこ汚い浮浪者みたいなこの男、その名をスコット・グレン。いかにも変わり者、世捨て人って感じで、今回の登頂計画への皮肉をひとくさり。だが、そんな薄汚ない男の言う事など聞く者などいない。彼の苦言も軽くいなしてパーティーに興じるパクストンであった。

 

妹の遭難に不気味なほどイキイキ(笑)

 さて翌朝、何となく山頂がおかしな感じ。だが、計画はゴー。パクストンご一行は山頂目指して登り始めた。だけど、何となく天気が妙な具合に変わっていくじゃないか。

 これはマズいと感じ始めたミスター・エヴェレストは引き返そうと言うが、ここらで角川ならぬパクストンは本性出し始め、彼をなだめつつ半分脅しで山頂へのアタックを続けるように命じるのだった。では、紅一点タニーはどうだ? みなさん、彼女のコメントにご注目。

 「山頂をめざしましょう」

 聞いたかい?みなさん。この女が「行きましょう」とダメ押ししたんだよ。ハッキリ言うと、パクストンの次に悪い奴がこの女だよ。よせばいいのに、もうミスター・エヴェレストだって行きたくもないのに、この女の最後の一押しのおかげでアタック続行となったわけ。みんなは忘れるかもしれないけど俺は覚えてるぜ。

 さて、イヤイヤながら登っていく一行。その頃のんきなオドネルくんはノコノコとベースキャンプに遊びに来て、天気悪くなってきたから彼ら下山するんでしょ?なんて言ってる。ところが下山するどころかアタックしてると知ったからビックリ。ここのスタッフが持っている無線器をむしり取って、早く帰れと叫ぶが時すでに遅し。

 ミスター・エヴェレストもいくら何でも付き合いきれないと引き返そうとしたところで、嵐とともに雪崩がドッと襲ってきた。何人かが派手にフッ飛ばされる中で、パクストン、タニー、ミスター・エヴェレストの3人は偶然にクレバスの中に落ちて難を逃れたんだね。

 でも深いクレバスの中に落ち込んだ上に、入口を雪崩が埋め尽くして閉じ込められた格好になってしまった。助かったとは言え、ここはK-2。救援隊も何も来やしない。まして氷の中に閉じ込められたかたちになってるのだ。極端に寒いところで長時間過ごすと肺水腫という呼吸困難な病気になって死ぬらしい。それをしのぐためには水を取り続ける必要があるが、水そのものも氷を溶かす燃料にも限りがある。肺水腫を起こした時に注射する薬も手持ちの量は少ない。せいぜいもっていいとこ30時間と聞かされ、オドネルくんはお先真っ暗。

 通信もクレバスの壁が邪魔してノイズしか届かない。この遥か高く、難度の激しい山のどこにいるのかも分からない。第一見つかったとして、そこまで行くのにどれくらい時間がかかるんだ?それまで持つのか?

 やがてノイズだけの通信でも、親父直伝のモールス信号で兄オドネルと妹タニーのコミュニケーションはバッチリとれた。思いっきり偉そうな態度をとってたタニーも、声さえ聞こえりゃここは兄貴にとびっきりの泣き声猫なで声で訴えたいところ。だけど、自分が「山頂に行こう」などと言ったことは、おくびにも出さない都合の良さ。もう自分じゃ忘れちゃってんじゃないの? いやはやムスメ心は山の天気。これに男は常に振り回される運命なんだね。だから俺も昔、富士山で悪寒がはしったんだな(笑)。あれだけ腰抜け呼ばわりされたオドネルも、結局まんまと妹の手の内にハマる。妹を助けたい一心でジタバタしたあげく、まずクレバスの壁をどうしよう?と考え始めるのだった。するとパキスタン軍の前線基地にちょっと触れただけでヤバいニトロがワンサカあると言うではないか。

 夜、ベースキャンプにたむろする大勢の山男たちを前に、頼りなさそうなオドネルは熱弁ふるって訴える。俺と一緒に来て妹を助けてくれ! パクストンの会社側の人間からも大金を積むとの申し出があって、何とかパラパラながら人が集まった。言っとくけど、ここでパラパラってのは踊りの名前じゃないぜ。

 それにしたっておまえ大丈夫なのかと尋ねられるオドネル。バーティカル・リミット超えたバカ高い雪山にこんな短時間で登ろうなんて狂気のさたと止められても、バーティカル何だって?それってCGで描いたカワイ子ちゃんのビキニやヌードの写真集か何かのこと?バカそりゃバーチャルアイドルだ(笑)ってもう大ボケこいてて本人まるっきりネガティブな発想なし。なぁに「プロポーズ」であれだけ女からアホ扱いされ振り回されたこの俺だ。ムスメ心は山の天気と言うだろが。あの女どもにいいようにコケにされモミクチャにされた経験をもってすれば、K-2ごときものの数ではないわ…とこりゃゴモットモ。本来なら悲壮感ヒシヒシとにじみ出てくるはずなのに、なぜか妹が遭難して救助計画建て始めた頃から気持ち悪いほどイキイキし始めてる。それともクレバスの中で泣きっツラでヒ〜ヒ〜言ってるクソ生意気な妹を一目見たいとか、人が良さそうに見えて実は結構根性悪いとこあるんじゃないかと疑いたくなるオドネルなのであった。

 そうそう、夕べパーティーにやってきて座を思いっきりシラけさせたスコット・グレンが、山男としてかなりな奴らしい。昔、山でガイドやってた妻が遭難してから世捨て人みたいになっておかしくなっちゃったけど、本来腕はかなり確かなはず。どうもこの妻のインネン話はいわくありげだけどね〜。でも、もう女は怖くないオドネルならこの地球上に怖いもんなし。何とか仲間に引きずり込もうと勝手に決めている。

 さぁ、集めた連中とともに山腹までヘリで出発だ。しかし準備とかその他もろもろで、余計な時間がかかってしまった。彼らに残されたタイムリミットは22時間だ!

 

ダメ押し見せ場もさわやかでイヤミなし

 正直言って映画はここから本題なんだけど、これ以上ストーリー追っても意味ないです。だって文字ではどうにも表現できない世界なんだから。久々に本当に本当に凄まじいものを見せてもらったよ。これは見ていただくより他ないね。

 要するに山登っていくだけの話なんでしょ?ってゴタク並べるラース・フォン・トリアー好きのアナタ(笑)、それで十分じゃないですか。これでビョークまで出てきて歌って踊ったらイヤミだよ(笑)。

 とにかく見せ場が凄まじいとかいろいろ言ったところで「またか」って感じにしかならないよね。ただ、その見せ場がパッと見せて終わりってもんじゃなくって、これでもかこれでもかと押して押してダメ押しする見せ場づくりになっているんだよ。ここまで徹底するのも珍しいんじゃないか?

 また、普通ここまでダメ押し的な見せ場のつくり方をすると、例えば「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」の中の見せ場みたいに、見せ場のために見せ場をつくるような、まるでドリフの「全員集合」のセットみたいなわざとらしさ、あざとさが鼻につくものになってしまいがちだ。だが、この作品ではそんなイヤらしさがあまり感じられないんだよね。

 僕はねぇ、それは自然というものはこういうものだ、自然の中で人間なんて吹けば飛ぶようなものだと、劇中で明言こそしてないがずっと見る者に感じさせ続けてる脚本と演出のおかげじゃないかなと思っているんだよね。だからイヤミにならない。この作品がすごくハリウッド・エンターテインメント的なスペクタクル・アクションなのに、なぜか清々しい印象を受けるのも、そのためじゃないか?

 雪山を舞台にしたスペクタクル・アクション映画というと、あのスタローンの「クリフハンガー」がすぐ思い出すよね。あの作品もこの種のジャンルでは決定版っぽい感じがしたけれど、犯罪とか雪山以外の要素もいろいろ入っていた。その点、この「バーティカル・リミット」は余計な要素は徹頭徹尾排除されていて、純粋に雪山の凄さ怖さをトコトン堪能できる。先に述べた見せ場つるべ打ちでもあざとさがない由縁は、そのへんにあるんじゃないかな。

 その「クリフハンガー」つながりでいけば、言っちゃ悪いけど主役の違いもあると思うんだよね。例え断崖絶壁から落っこちても大丈夫そうな体格のスタローンと、どこをどう見てもひ弱そうなクリス・オドネルでは、そりゃサスペンスの度合が全然違う。スターとしての格から言ってもいつ死んでもおかしくないクリス・オドネルだからこその、究極の恐怖があるんだよ。これは大きいと思うよ。

 だけどそのオドネル、ひ弱な外観を生かされながらも今回ちょっと一味違う。登山をずっとやってきた山男ぶり、父親の非業の最後を目のあたりにした苦汁に満ちた過去など、その甘いマスクを曇らせる辛い男ぶりが、まるで「U-571」でのマシュー・マコノヒーの変身ぶりを彷彿とさせ新生面発揮。これが結構いいんだよね。

 そして本来がケチな小悪党役者だったのに、このところいい男役が相次ぎ柄にもなくイメージアップしていたビル・パクストンが、今回はまたまたゲスな男を楽しそうにやってるのは見ている方としては嬉しい。「U-571」の艦長役はいくら何でも出世しすぎと思ってたんだよな。あの映画でパクストン艦長に説教されてたマコノヒーも、あんたに言われたくないって顔してたよ(笑)。

 そして、ここんとこ何考えてるのか分からない役が相次ぐスコット・グレン。今回もこの映画の中のジョーカーのカードみたいな役回りで、作品にグッと陰影を与えている。この男性スター3人がどれもこれもトップスター然としてキンキラしてないところが、かえって自然が主役のこの映画にピッタリだし、彼らの各人各様の男くささが見ものとなってくるんだよね。

 監督のマーティン・キャンベルは、アントニオ・バンデラス主演の「マスク・オブ・ゾロ」、そしてピアース・ブロスナンを迎えて新生ジェームズ・ボンドを売り出した007シリーズ「ゴールデンアイ」を監督したのが一番有名な仕事だが、それに先立ちレイ・リオッタ主演の「ノー・エスケイプ」なる硬派近未来SFサスペンスアクションを撮っていたのはあまり知られてないね。これなかなか小粒ながら面白かったんだよ。だから、ブロスナン主演になってからボンド・シリーズのイキがよくなってきたのも、実は半分はこの人が功労者ではないかと思ってるんだ。

 今回も、大作ながらもゼイ肉のついてないキビキビした演出ぶりはなかなか好ましい。この人ニュージーランド出身なんで今回のロケ地もニュージーランド。そして「ゴールデンアイ」から自分がボンドガールに抜擢したイザベラ・スコルプコを引っぱってきて、コワモテだけど優しい山女を演じさせているあたり、すべて自分の土俵に持ち込んで思う存分力を発揮しようとしてるようでこれまた好感度大。これからも期待できるかも。

 確かにまぎれもないエンターテインメント大作ながら、一生懸命つくってそうで、その頑張りぶりも僕はなかなか気に入った。

 やっぱりこうして見ると、山はいいね。山の天気だって今は結構気に入ってるよ。思い通りにならなくて、少々気まぐれなんだけどね。

 その思い通りにならないところが、人生の面白さなのだから。

 

 

 

 

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