「キャラバン」

  Himalaya, L'Enfance d'un Chef (Caravan)

 (2000/11/27)


一見、地味で眠くなる映画と見えて…

 私のサイト「DAY FOR NIGHT」も2年目となると、いろいろ恒例企画が出始めるんだね。この11月からアップした「正月映画を語ろう」なる座談会も2回目。昨年やった第1回の時は情報通のくりすさんが話題を引っぱってくれて、他のメンバーがそれに茶々入れればよかったから楽だった。それでも実際に座談会が行われた10月中旬の時点では、正月映画の話なんか公然とは口にされない頃。かろうじて映画のタイトルとスタッフ&キャストだけ分かっているのはまだいい方で、タイトルしか分からないなんて作品もザラ。当然、その映画の内容なんか全然分からない状態で、これは面白いのかねぇ?なんて勝手に想像して語っていた。ひどい座談会だよね(笑)。

 まして今年はと言えば、くりすさんは資料こそつくってくれたが座談会には参加できなくなった。だから話の原動力がいなくなったも同然で、どう考えても先行き不安な雰囲気が漂った。

 でも、不思議なもので映画ファンの嗅覚というか奇妙な勘ってのはあって、これはこんな感じの作品というのは予告編を見れば…いや、仮にスチール写真だけ、あるいは主なスタッフ&キャスト名だけしか分からなくても、何となくその内容や作品の出来いかんまで読めていることが多いね。説明のつかない勘で出来を言い当ててしまうというのは、やっぱり映画ファンのサガというものなのかな。

 でもやっぱり…とでも言うべきか、まるっきりアテがハズれる作品もあるんですよ。大コケもあるし大化けというのも。この大化けを探し当てることこそが映画を見る醍醐味なんだけどね。でも、この座談会企画しているほう気が気じゃない。例えば今年で言えば「キャラバン」なんてそうだった。だって、何の情報もなかったんだもの。だから、内容なんて惨憺たるもの。

 

F:次は「キャラバン」!

かのこ:インターネットで予告編見たんですよ。月が出ていてブルーな画面で、幻想的で寒そうな感じの映像なんですよ。どんな内容かは分からないんです。でも、ミニシアター系とか好きそうな人はいいかも。寝る人は寝るっぽい映画と見ました(笑)

<中略>

あむじん:(資料見て)これスペクタクルって書いてあるじゃないですか?

アインのママだからそういう大自然の景色がね。…でもこれ寝ちゃうかなぁ?

F:ケレン味が全然ない映画だったら、眠くなっちゃうかもしれませんね

アインのママキャストの名前を見てもねぇ…分からないですね。

 

 まぁ、でもこうなるのも無理ないわな。誰も何にも知らないんじゃ。では実際のところ、問題の「キャラバン」ってどういう映画だったかというと…。

 

ネパールの小さな村で内閣不信任案可決(笑)

 ここはネパール、標高何千メートルかのヒマラヤ山脈にある小さな村。おりしもちょうど村のキャバラン隊が、長い旅から山を越えて帰ったところ。この村のキャラバン隊、ここで取れた塩を袋に詰めて、麦と交換するために定期的に山向こうの町まで繰り出す。その実際は、牛みたいなこちらの動物ヤクに荷を積んで、たくさんのヤクたちを大勢の男たちが追いながら進む雄大なものだ。

 キャラバン隊が帰ってきたと村は賑わい、村の少年パサンも大喜びで迎えるが、今回のキャラバン隊一行の足どりはなぜか重い。それもそのはず。今回のキャラバンでは仲間が一人命を落とした。その亡骸に駆け寄るのが村の長老でいかりや長介似のティンレ。死んだのは彼の一人息子、さっき出てきたパサン少年の父親だ。一緒にキャラバン隊を率いてきたカルマという男がすまなそうに、「彼が近道しようとしたんでヤメロと言ったんだが…」とか言うんだが、そのカルマという名に加えて長髪とヒゲの風貌がポアとかサリンとかブツブツ言ってたある男を思い出させるのが災いしたか、いかりやティンレ老はムッとしたまま立ち去ってしまう。泣き崩れるのは未亡人になってしまったこの男の妻ペマ。それを見ると、カルマもやりきれない気持ちに苛まれるのだった。

 さて、それにしても今までキャラバン隊を率いてきたリーダーがいなくなり、これから誰がやればいいものやら。この人間が将来の村の長老になるのだから、責任は重大なのだ。決して日本の首相のようにいいかげんに決められるものではない。

 村のみんなは口々に、次のリーダーは例のカルマだと言ってくる。これがいかりやには気にいらない。カルマの一族には昔からいわくインネンがあって、いかりやは以前から気にいらなかったところへ、今度は息子の死で逆恨みしてカルマが殺したと思い込んでる。これを事あるごとにグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチグチ言うもんだから、聞かされてるほうはウンザリ。みんな長老だと思うから黙ってるけど、こりゃもうモウロクしたかなというのが内心のところ。

 カルマは何とかそんないかりやの怒り(笑)を鎮めようといろいろ言ったりするのだが、これが全く逆効果。怒りの火に油を注ぐ結果となって苦りきるカルマだったが、それには訳がある。実はカルマと例の未亡人のペマは幼馴染み。いつの間にか二人の間にはひそかに愛情が生まれていたのだが、いかりやティンレの手前それは言えない約束なのだった。

 いかりやはいかりやで、カルマはリーダーの地位、そしてゆくゆくは長老の地位をも狙っていると怒りに怒る。荒井注がやめた後、ちゃっかり志村けんが後ガマに入り込んだように抜け目なくやるつもりだろうが、バカ殿だろうが何だろうがその手はくわんぞ。ドリフのリーダーの地位は渡せん!と言ったか言わないか知らないが、とにかくカルマのカの字も聞くのがイヤなのだ。

 しかもこの両者、元々意見が180度違うんだね。

カルマ:こんばんわ、「朝まで生キャラバン」の時間がやってまいりました。司会は私、カルマ聡一郎です。今日はキャラバン出発の時期をどう決めるかについて、朝までじっくり討論したいと思います。では、まずティンレさん。

いかりやティンレ:例年のように占いで決めるのが当り前じゃろうが。何を言っておるんだかこのボケ。

カルマ:でも、何でまだ出発日が決まらないんです?

村の老人代表:まだ占いの最中なんだよ。ちょっと結論は待ってもらえんかねぇ。

カルマ:そんな事言ってたら、すぐ嵐が来ちゃうかもしれないですよ。

いかりや:占いの結果は絶対じゃ。今までずっとそれでやってきたわ。

村の若者代表:あのね長老。今、世界を動かしてるのは情報なんですよ、情報。データに基づいて出発日決めないといかんでしょう?

カルマ:危機管理のあり方が問われますよね。

いかりや:何を言っとるんじゃ。そんな事したら悪魔にたたられるぞ。

カルマ:そのへん、女性の立場からペマさんどうです?

ペマ:私はお義父さんと幼馴染みのカルマさんの間がうまくいくことだけが望みです。

カルマ:そうは言っても、どちらかの立場に着かざるを得ないでしょう? その場合、どっちなんです?

ペマ:私は…お義父さん側に着かざるを得ません。

カルマ:それでいいんですか?

ペマ:仕方ありません。

いかりや:いらん事を聞くな!こっちに着くちゅうんじゃから、こっち側なんじゃ!

村の若者代表:だが、今度のキャラバンのリーダーは誰かという問題が残ってますよ。僕たちは、やはりここでニューリーダーとしてカルマさんに期待したいですね(拍手)。

いかりや:そりゃダメじゃ!奴の一族は信用できん。

カルマ:やれやれ。そんな古い発想じゃ選挙には勝てない、じゃなかった…(笑)。

村の老人代表:まぁまぁ。だが、いかりやティンレ長老。ここは確かに世代交代、党内刷新の時期だと思うんだがねぇ。そうすると、カルマ君しかおらんのじゃないか?

村の若者代表:その通り!さもなきゃわが派は内閣不信任案に賛成します

いかりや:フン、どうせ加藤紘一みたいに口ばかりのクセに。わしゃ絶対認めん! 朝まで討論したって変わらんゾ!

 …というわけで、周囲はみんな次キャラバンのリーダーにカルマを推すのに、いかりやティンレは言うこと聞かない。でも他に誰かやる奴がいるはずとティンレは立候補に期待するが、結局誰も現われないんだよね。

 苦りきるいかりやティンレは幼い頃から僧院に預けて修行させてた次男のノルブを口説きに行くが、子供の頃から僧の修行と絵師としての勉強だけで、キャラバンなんて行ったことないのに今さら無理だ…と剣もホロロ。第一、ノルブもカルマを高く評価していて、彼がやるべきだと思っているんだよね。

 結局誰もやる奴いない。よ〜し、それならわし本人がやる。意固地に凝り固まったティンレは、もう何年もキャラバンに行ってない自らが率いると宣言。これには回りも困った。周囲が辞めて欲しいのに辞める気全然ない森首相みたい(笑)。

 それでもティンレの目算では、さすがに長老の俺が言うんだ、大差で大勝利とはいかなくてもブッシュVSゴアの接戦くらいにまでは持ち込めるのでは…と勝手に思い込んでいたわけ。フロリダ州で手作業による集計のやり直しまで持ち込めれば、わしに運が向いてくるわい(笑)。

 ところが出口調査から全く勝ち目なし。そして、さすがカルマは加藤茶…じゃなくって加藤紘一とは大違い。さっさと内閣不信任案に賛成して占いなんか完全無視で出発。若い奴らはみんなこれに同調して一緒に行ってしまい自民党は分裂(笑)。それだけでもこの村は日本の政界よりマシ。後に残されたのは年寄りたちと未亡人ペマ、それにパサン少年。これじゃあどうにもなるまいて。

 それでもヤケクソ怪気炎で張り切るいかりや…バカにするなよ若僧ども、わしらスペースカウボーイならぬヒマラヤ・ヤクボーイズじゃ(笑)! だが本人その気でも、周囲の連中が不安を隠せない。だから出発当日の間際になって、例え未経験者とは言え僧院からノルブが駆けつけてくれて、キャラバンの平均年齢をぐっと下げてくれたのは心強かったんだね。もちろんノルブの方も、本当は絵の勉強に専念したかったところを親父の窮状見るに見かねて加わったわけ。さぁ、このご隠居一行の道中、果たしてどうなるか?

 で、出発したのはいいけれど、カルマの先頭集団はずっと先にスタートしてるのに加えて、若いから足取りも軽やかだからドンドン進むけど、こっちは年寄り女子供集団だからヨロヨロヨタヨタ。

 「オ〜〜〜〜〜〜ッス! 今日も元気にいってみよ〜〜〜!」エンヤ〜コ〜ラヤッと…じゃないけど、大声張り上げるとコヨーテがヤクを襲ってこないなどとカラ元気全開のいかりや。でも、それに付き合わされてる高木ブー以下ドリフの面々はヒーコラ疲れて早速グチも出始める。不慣れなペマ&パサン母子はもうグロッキーだし、新加入のノルブだってキツい。何だかんだと理由をつけちゃ小休止するていたらくだが、実はそれで一番助かっているのは、リーダーのいかりやティンレだから仕方がない。

 それでもいかりやは内心何とか差を詰めて、カルマの鼻をあかしたいという野望があるのだった。ヒマラヤ・ヤクボーイズをナメるなよ。でも、どんなに頑張っても差は広がるばかり。

 焦りに焦ったいかりやは、「全員集合」恒例のメンバーへのシゴキを決意する。湖沿いの急傾斜の近道を通れば一挙に挽回できるはずじゃ。これを聞いてみんなはギョッとした。あの道は「悪魔の道」って言われてるんじゃなかったか? ご隠居〜、そんな無茶しないでそこの茶店でダンゴでも食いましょうよ〜とうっかり八兵衛までブーたれるけど、一旦言い出したらきかない越後のちりめん問屋の隠居こと水戸のご老公。助さん格さんも矢七すらいないのに、この困難窮まりない道を選択するんだね。

 これが湖に面した岸壁にかろうじて刻み込まれた細い道。しかも急傾斜ときてるから、足腰弱った連中がたくさんのヤク連れて通るなんて最悪の情況なわけ。一歩間違ったら真っ逆さまに眼下の湖に転落しちゃうし。足元はガタガタで何とも危ない。しかも案の定、ボロボロの道が途中でとぎれてるじゃないの。それに道が細すぎて今さら後戻りもできない。ありゃ〜、どうしよう。

 仕方がない。わしの通った後に道は出来るんじゃとばかり、その場で急ごしらえの道をつくりながら前進ということになった。だけど何だか危なっかしいんだよね。いきなり、「恐怖の報酬」のニトロ積んだトラックがボロボロの橋を渡るみたいなスリリングな見せ場となる。思った通り最後の一頭が渡り切れず、急造の道が崩れて湖に落っこちる。でも、人は無事だった。ヒヤッとしたぜ。

 この難所を乗り切るといかりやティンレは「悪魔にヤク一頭くれてやったわ、カッカッカ」と、まったく懲りずに高笑い。たまたまツイていたとは一言だって言わないのはさすが。あっと言う間にカルマ一行に追い付き「どんなもんだ」と大イバリだから、これにはカルマもいい気分がしない。

 あげく人もヤクも疲れ切ってるから休ませたいとカルマは思っているのに、いかりやティンレは早速ここぞとばかりリーダー風を吹かせ、妙ちきりんな占いをやらかして嵐が来るからすぐに移動しろと言い始める。面白くないカルマはここで休んでしばらく居残るとフテ寝。元気一杯のいかりやが、今度はみんなを率いて出発するのだった。

 ペマが一緒に来てと頼んでもフテくされてるカルマ。いや、ここは惚れた女の前だからこそ、バカな男の意地がある。フン、勝手にしろ。空はこんなに晴れてるぞ。

 しかしドリフご一行が出発するやいなや一天にわかにかき曇り、たちまち雪が降りだしたではないか。しかも強風が出てきてものすごい吹雪に。確かにいかりや占い大当り。

 ただ、やっぱり休みなしですぐにこの移動は、人にもヤクにも、そして何よりティンレの体にも目一杯こたえた。みんなバタバタ倒れていく。これはマズいと悟ったいかりやティンレは、一同を一時避難の場所まで誘導して、自分はよせばいいのに元の道まで引き返したが、そこで力尽きてぶっ倒れる。

 その頃、フテ寝のカルマは…というと、あんなに晴れてた空があっと言う間に曇って吹雪となったのを見てビックリ。あわてて一同の後を追いかけて、道の途中で倒れてたいかりやを見つけるんだね。

 みんなが野営しているテントのところまで、ティンレを連れて行くカルマ。これで何とかカルマも男として顔が立ったかな。いかりやティンレも一命をとりとめた。

 その夜、みんなが寝静まってから、久々に語らうカルマとペマの姿があった。俺はあの天候の急変を察知できなかった、さすが長さんはドリフのリーダーだよな。いえ、貴方がいなけりゃ長さん死んでたわ…な〜んて会話を重ねているうちに、いつの間にやら体まで重なっちゃって。やっぱ二人とも我慢してたんだねぇ。

 でも、たまたまそれを見たいかりやは、一瞬二人をドヤしつけようとしたんだよ。でもそこはそれ、温厚なノルブがグッと止めた。

 ヤボはよしなよ父さん。なるようにしかならないんだからさ。

 

異色の題材ながら、実は骨太で純粋な娯楽作品

 誰がどう見たって事前のイメージだと地味〜な良心作としか見えないこの「キャラバン」、これが何と血湧き肉躍る娯楽大作とはみなさん夢にも思いますまい。

 監督のエリック・ヴァリはネパールに魅せられて住みつき、ここで著作やら写真やらを手がけていた人。そのうち「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の撮影に協力、これで映画界とのつながりができて、今回の作品を発表するに至ったらしい。なるほど、そんな特異な背景を持った人でなければ、これほどの題材を撮りきることは出来まい。

 確かに現地の珍しい風習やら景色、人々の暮らしとかがふんだんに登場して、見る者の目を楽しませる。ヤクのキャラバンなんて習慣、初めて知った。そういう意味では、ある種のエキゾチシズムで見る者を楽しませる映画であることは否定できない。

 音楽だって、向こうのガムランをベースにしている作りは、確かにいかにも…の感がある。だがガムランをベースにしながらも決して現地音楽そのものではなく、仕上がりは一種のワールド・ミュージックやヒーリング・ミュージック風のサウンドになっていて、むしろ今どきのモダンな雰囲気があるんだね。これが、この作品の基本的なスタンスになっているんだ。

 だから、出てくる人々も現地の人々(あるいは俳優かもしれないが、限りなく現地の人々に近く見える人々)で、現地の生活をリアルに地味に淡々と描く映画のように見えるが、実は彼らはあんまり素朴でも悟りきって達観してるわけでも枯れているわけでもない。近代文明に取り巻かれている我々と同じで、何でも型を壊していこうとする変革者あり、規制概念に囚われた旧世代あり。意固地になったり、プライドを守るために素直になれなかったり、フテくされたり…ここに出てくる人々の感情は、あまりにも日頃の我々と変わらないんで驚くし、だから我々でも難なく感情移入してしまう。こういう奴らっているよな。

 この手の作品にありがちな、妙に神棚にまつり上げちゃって「辺境の地の孤高の人々=純粋で汚れなき悟りの境地」…みたいに扱う、我々のつまらない既成のとらえ方を壊したところに、この映画の面白さがある。決して水栽培の球根みたいにひ弱で無菌状態の空気みたいに小ぎれいな、いかにもミニシアターでかかる作品みたいな歪んだ脆弱さとは、この映画は無縁なのだ。もっと骨太で派手で、純粋な娯楽映画として面白いんだよね。対立する世代間の軋轢あり、淡い恋心あり、サスペンス、スペクタクル、アクションあり。ハッキリ言ってヘタクソな「チャーリーズ・エンジェル」なんかより、ずっとエンターテインメントしてる作品がこれなのだ。

 だって見てごらんよ、画面に登場する顔を。例えば火星人が「パトリオット」見たって、画面に登場しただけでメル・ギブソンがヒーロー役者だってことはたちどころに分かると思うよね。この作品のカルマ役の俳優も、出てきただけでヒーローの顔してるんだよ。それだけじゃない。未亡人のペマだって、向こうの人特有のあまり風呂に入ってない汚なづくりしてるのにも関わらず、どこかこれはヒロインだと思わせる美しさを秘めてる。この映画は、そのへんのところをエグいくらいハッキリ描いた、堂々たる面白い娯楽映画なんだ。これを神棚に上げちゃもったいないよ。ましてミニシアター映画ファンになんて…(笑)! まぁ、実際にかかるのはミニシアターになっちゃうんだろうけどね。

 プロデューサーがジャック・ペランというのも驚いた。この人、若い映画ファンには「ニュー・シネマ・パラダイス」のトトが大きくなって映画監督になった時の役の人…と言えば、一番通りがいいだろうか? 元々はフランスの青春スターで甘いマスクを見せていたけど、さすがに僕もその頃の彼をリアル・タイムでは見ていない。だけど、役者的にはそんなスタンスだった彼が、いきなりコスタ=ガブラスの硬派政治サスペンス「Z」をプロデュースしたんだって言うから、人は見かけによらない。その後の彼のプロデュース作品にも異色のラインナップが並んでて、「薔薇の名前」「セブン・イヤーズ・イン・チベット」のフランス国際派監督ジャン・ジャック・アノーの出世作「ブラック&ホワイト・イン・カラー」とか、昆虫の微小な世界を拡大してスペクタクルに見せた自然ドキュメンタリー「ミクロコスモス」とか、その青春スター上がりの甘ったるいマスクとは裏腹の、なかなか骨のあるプロデュースぶりなのだ。

 先の「ブラック&ホワイト・イン・カラー」つながりや、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」に出演していた俳優が何人かこの「キャラバン」にも出ているということ、そして何よりこの作品の監督エリック・ヴァリが「セブン・イヤーズ〜」の協力者だったことから考えて、ペランにこの企画を持ちかけたのは自らも「人類創世」「子熊物語」とユニークな作品を連発するジャン・ジャック・アノーだったと考えるのが妥当だろうが、それにしてもこんなオリジナルな企画を実現するだけでなく、堂々たる娯楽作品として成立させてキッチリ商売してしまう(ヨーロッパでは大ヒットし、アメリカでもアカデミー外国語映画賞候補となって話題をまいた。)あたり、なかなかジャック・ペランはサムライだよね。

 とにかく、僕はここで座談会での不明をお詫びするとともに、この作品を年末年始屈指のお正月娯楽映画としてみなさまに強くお勧めする次第です。

 

 翌日、すっかり晴れたヒマラヤの天気同様、カルマとペマも腰から下がスッキリ。ひん死の状態だったティンレも晴れ晴れとした表情で、旅立ちを迎えていた。ティンレは今までのわだかまりを乗り越え、ここからはキャラバンを頼むとカルマに託すのだった。

 「俺もおまえも頑固者ではいい勝負、似た者同士だぁな」

 そんなティンレの打ち解けた言葉がカルマには解せない。なぜなら、旧来からの風習に逆らい、ティンレに逆らい続けた自分ではなかったか? どこが似た者なのだ? すると、いかりやティンレがニヤリと笑うんだね。

 「俺がいつも昔通りの決まり事を守ってたと思ってるのか? 逆らうくらいでなけりゃ長老にはなれんのだ。うわっはっはっはっは!」

 やるなクソジジイ!カッコよすぎるぜ(笑)。豪快ヒマラヤにこだまするバカ笑いのいかりやティンレだったが、そんな無茶が災いしてか、バカ笑いからむせてガックリ。ティンレこれにて大往生となった。

 長老は去った。万感の思いを胸に新リーダーとなったカルマは、出発を待つキャラバン隊に向かって、力強く号令をかけるのだった。

 

 「8時だヨ!全員集合〜!」

 

 ご静聴ありがとうございました(笑)。

 

 

 

 

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