「シャフト」

  Shaft

 (2000/11/20)


 う〜っす! おまえは誰だって? 俺だよ俺。70年代からワルには恐れられ女にはモテモテのクールガイ…シャフトさまよ。今年からこのサミュエル・L・ジャクソンさまが二代目襲名ってことなんで、そこんとこヨ・ロ・シ・ク! ど〜うだい、このレザーコート。キマってるだろ? これを着こなせなきゃ、とってもシャフトとは言えないわけよ。今回はこの俺さまの2000年への凱旋特別興行ということで、復活シャフトをビビッとみんなに印象づけちまうから、よろしくな。ヘイ、メ〜ン!

 さ〜て、まず見てくれよこのイカしたオープニング。アイザック・ヘイズがつくった往年の名曲「黒いジャガーのテーマ」も、この俺サミュエルさまのために「シャフト2000」として生まれ変わったぜ。でもリニューアルされたとは言え、このサウンド聞くと何となく70年代の危険でセクシーな空気が立ち上ってくるよな。このオープニングの画面でも、俺さまのカッチョええキメキメ・ポーズ名場面集とともに、うごめく女体がコラージュされててセクシーだぜぇ。なにぃ〜、エッチだと? ヤワな言葉使うんじゃねえ小僧。70年代はセックス! エッチなんてフザケた言葉じゃない、もっとパワフルなセックス!なんだよ。もう一回言ってみな、セックス! 上出来だぜブラザー。でも、今回の俺さまサミュエル・シャフトはノーセックスなんだよな。前任の「黒いジャガー」はやりまくりだったのに。やっぱ全世界的にエイズとかあるし…。実際のとこ、セックス抜きでも俺さまは俺さまだ、文句あっか、ってんだ。な?

 さぁて、早速事件だ。ニューヨークっていうと最近でこそ安全になってきたようだが、70年代は犯罪都市だったんだよ。この俺が帰ってきた以上、ニューヨークもヤワなままではいられねえぜ。だけど今度は俺さまもちょっと勝手が違う。今度のニュー「シャフト」はニューヨーク市警の刑事って設定だ。俺さまが宮仕えかよぉとダダこねてみたが、何でもサツの中でもやりたい放題やっていいってことだからマイペースでいくぜ。

 さて俺が事件現場に駆けつけてみると、路上に頭カチ割られたブラザーが一人。こいつ、どうやら近くの飲み屋から出てきたとこをやられたらしい。俺さまの動物的な嗅覚がたちまちひらめくわけよ。するってえと、カウンターのねえちゃんトニ・コレットが怯えた顔して変な目つきしてるじゃねえか。そこにはナマイキそうな白ん坊のクリスチャン・ベールがフンぞり返ってる。手にはベットリ血がついてるじゃねえか。たっぷり脅してフン捕まえたが、意外にこのガキャア余裕の表情。それもそのはず、このベールってガキは不動産王のドラ息子で、金なら有り余ってる。どうせ、すぐに出てこれるくらいにしか思ってない。トニ・コレットは…というと、顔に血がついてるくせに、知らぬ存ぜぬ押し通して黙りこくってる。なぁに怯えていやがるんだぁ?

 頭割られたブラザーの連れの女に話を聞くと、このベール小僧はブラザーに人種差別的なちょっかい出してたらしい。たまりかねてからかい返したら逆恨みして…ってアホな話。だが、犯行の直接の目撃者がいねえ。ん? さては、あのトニ・コレットが…?

 戻ってみるとトニ・コレットがいねえ。ちゃんと監視しとけと言っといたのに、最近は警官の質も落ちたもんだ。でも、まだ日本の警察ほど落ちちゃいねえがな、メ〜ン。

 見ると頭割られたブラザーはひん死で激しくケイレンしてる。それ見たベールの白ん坊がヘラヘラ笑ってるじゃねえか。俺は奴のツラに何発かパンチをお見舞いしたぜ。金持ちのボンボンだぁ?人権だぁ? 俺はシャフトだ、文句あっか?

 裁判の結果は巨額の保釈金を支払うことでケリがついた。奴は早速シャバに出てきて、そのまま親父の金でヨーロッパに高飛びだぁな。ったく、こういう事件見てると、人権ってのは死んだ被害者にはねえのかよって気になるよな。サツなんざ辞めてやる!って怒鳴ってみても空しい。さすがのシャフトさまもついブルーになって、帰り道は車には乗らずグラサンかけてトボトボ歩く、「大都会PART II」とか「西部警察」みたいな石原プロのアクション・ドラマでの渡哲也ふうにキメたくもなるってもんだぜ。

 で、2年後。おめえ何やってんだって? 悪りぃな、まだデカやってんだよ。まぁ巷に不景気風も吹き荒れてるしな。とにかく、俺はシャフトなんだ、文句あっか?

 今日は街の麻薬精製工場のガサ入れ。だが、これといった収穫はなし。このへんを仕切ってるボス、ジェフリー・ライトが俺たちを嘲るように見下ろしてやがる。気にくわねえから、ちょっと挑発したあげく別件でパクった。ナメんなよ、俺はシャフトだからな。

 さぁて今日は忙しいんだ。夜は空港に自家用ジェットで例のクリスチャン・ベールが帰ってくる。そこをすかさずパクってブタ箱にブチ込むこの俺、やっぱシャフト・ザ・マン、街のヒーローだぁな。

 だが、俺の叔父貴リチャード・ラウンドツリーだけはシブい顔。あんな事しても無駄だ…と言ってくれるんだよな。昔はあれで一代目シャフト=黒いジャガーとしてエグいとこも見せてブイブイいわせてたのに。もっとも、今でも2人も女を連れて家に帰るとこ見ると、下半身のシャフトの方は俺さまより健在かもしれねえな。

 実際のところ、俺はこの2年間片時だって例の事件を忘れたことはねえ。今だって暇があればあの目撃者トニ・コレットの消息を追っているが、どこへ消えちまったものかサッパリ姿が見えねえ。これだけは俺もお手上げだぁな。

 さぁてブタ箱の中では、金持ち白ん坊でガチガチの人種差別主義者のクリスチャン・ベールとドヤ街のヤクの帝王ジェフリー・ライトの2人がハチ合わせ。どう考えてもミスマッチなこの2人。しかし根性腐り切ってて俺さまシャフトへの憎しみも人一倍って共通点だけで、何とも不思議な結びつきが出来ちまうもんだよな。これは、さすがの俺さまでも考えもしなかったぜ。

 そしてまた裁判。結局保釈金の金額が上がっただけだとぉ? またベールのガキは自由の身だとぉ? 俺は本当にサツを辞めるぜ! 思わず警官のバッジを投げちまったからには、辞めねえわけにもいかねえからな。トホホ。

 こうなりゃサツとしてでなく、俺さまシャフトさまとしてケリをつける。それでこそ「黒いジャガー」らしくなってきたぜ。しかし、ワルってのは何だかんだとツルみやがるもんだよな。俺さまがアッチコッチとつついてるうちに、ワルどもがどっからともなく湧いてきやがる。構うもんか大掃除ついでだ。このシャフトさまがまとめて退治してやるぜ。

 悪党ども、文句あっか?

 

 1970年代黒人映画のはしり「黒いジャガー」のことは、正直言って後々に知ったわけで、リアルタイムには見ていないんだよ。あとはタランティーノなんかが騒いだおかげかな? だから、この主人公シャフトのキャラにもさほどの思い入れなし。どんなイメージだったか…ぐらいは覚えているけどね。

 で、驚いたのが、このリメイク手がけたのがジョン・シングルトン監督だってこと。確かに自ら黒人で、映画作家としても実績がある。だけど「ボーイズ’ン・ザ・フッド」とか「ハイヤー・ラーニング」とか、この人のつくった作品って主役がアフリカン・アメリカンだったり人種問題を扱っていたりってことはあるけど、どれも基本的にはマジメな作品ばかりじゃないか。こういう100パーセント娯楽映画って向いているのかな?

 オープニングとか見るとカッチョええ路線いってるんで、こりゃあキメキメにヤッテくれるかと思いきや、中味は意外に地味め。手堅く捜査して手堅くヒーローして手堅くアウトローして、手堅くアクションもしてしまう。今じゃSFX、CG、ワイヤー、カンフーあたりまえの何でもあり状態のハリウッドなのに、この映画では普通に走ったりカーチェイスしたり拳銃撃ったりしてます。ハッキリ言って今のアクション映画を見慣れた目から見るとスローでユルい。でもね、これが味なんだよ。

 1970年代って考えてみれば黒人映画に限らず、無数の刑事や探偵がアメリカ映画にあふれ返った時代、スティーブ・マックイーンもポール・ニューマンもクリント・イーストウッドもジーン・ハックマンも、みんなみ〜んな刑事や探偵経験者なんだよね。そうそう、この時代を最も体現している男、バート・レイノルズの安っぽい探偵「シャイマス」、やさぐれ刑事の「シャーキーズ・マシーン」なんか見ると、そのあたりの気分が味わえる。それらのアクション映画では、別にびっくりするようなスーパーアクションが繰り広げられるわけじゃない。派手派手で何もかも破壊し尽くす銃火器の暴走があるわけでもない。車が猛スピードで走ったって、バンバン空を飛ぶわけじゃない。普通にアクションしてるんだよ。

 刑事や探偵のキャラだってただアウトローってだけ。ストーリーもナゾがナゾを呼ぶってわけもなく、ただ行き当たりばったりに捜査してると、いかにものワルがあぶり出されてくるわけ。意外性なんてゼロなんだよ。

 だけど、そこは主演スターの顔で見せる。今度はあのごひいき男性スターがアウトロー刑事をやる。行きすぎ過剰捜査をやって、上司からお目玉くらう、自宅謹慎させられる。何度見たかなこういう趣向を。探偵だったら訳ありの女を抱くわけ。でも、そこがお楽しみなんだよ。当時の男性スターは、探偵・刑事をやれてイッチョマエのとこあったわけ。

 そういう意味では今度のリメイク「シャフト」、若い人の目には凄いとこなくておとなしめに映るかもしれないが、何よりあの時代の気分ってのが忠実に再現されてるのがうれしいね。

 悪党もその後の展開も意外性ゼロ。アクションも適度にユルんで緊迫感あまりなし。でもね、それでこそ大人が見る映画なんだよ。それが1970年代なの。今回はシングルトン監督のケレン味のないマジメな性格がたぶんプラスに働いたな。変に煽って面白くつくろうとせず、手堅く手堅くつくろうとしたのが功を奏したと見た。事件の中心が人種問題だったというところも、この監督のマジメさの現われなんだろうけど、そもそもそういう問題をドーンと全面に出して取り上げるってこと自体、今ふうな発想じゃなくてちょっと時代ズレてる感じだろ? 分かってやってたら偉い。

 サミュエル・L・ジャクソンは、何と言ってもカッコいいよ。でも、これもマジメなシングルトン効果なのか、ダーティーな面はあまり感じられずヴァイオレンスもさほどなくて、スゴみとニラみだけ。女にも手を出さないし…このへんは2000年という時代を明らかに意識してるのかな? サミュエルの元々のキャラクターもあって、そこはかとなくユーモアが漂う男となってるのが興味深い。そして、意外に人情家(笑)。困っている者がいると助けてやらずにいられない…なんて、今時ヒーローには考えられない人の良さでしょ? でも、これオリジナルの「黒いジャガー」だってこうじゃなかったと思うんだよねぇ。だとすると、これやっぱりマジメ派シングルトンならではということになるのかな? このへんも、何となく懐かしさを誘うところだよねぇ。

 何だって? 文句あっか? 失礼いたしました(笑)。

 

 

 

 

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