「インビジブル」

  Hollow Man

 (2000/10/16)


どこから湧き出るあの尊大さ

 久しぶりに歯医者に行ったんだよ。仕事場の近くで探してたんだけど、なかなかなくってね。

 だいぶ前に詰め物とれちゃって、前々から医者に行かなくっちゃと思ってはいたんだけど、なかなか時間がとれずにいたんだよ。そしたらもう一箇所の詰め物が欠けて、こりゃいよいよ治しに行かなくちゃならないということになった。

 で、探してたら…あったあった。女医さんの歯科で、助手からみんな女ばかりって女の園。これ読んでるみんな、俺がさぞかし喜んだと思ったでしょ。いや〜それがそうはいかなくてね。

 治療は、詰め物の治療と歯石の除去の2本立て。そのうち歯石をとる方は、若い助手の女の人がやってくれた。こっちは確かに極楽だったよ。丁寧にやってくれたし、アドバイスも優しかったしね。

「男の人ってどうしても力が強いんで、歯磨きもちょっと強すぎちゃうんですね。できるだけ、歯にやさし〜くしてあげてくださいねっ。」…うふん。やさし〜くね?俺ってそんなに力が強いかい(笑)?

 それに、治療中に彼女の胸が僕の頭にほんわか当たるんだよ。これがもう何と言うか(笑)…いや、俺が触れたくてそうなったんじゃない。たまたまそうなったんだ。誓って僕のせいじゃないよ!誤解するなって(笑)。

 だが、肝心の歯の詰め物の治療が問題だった。ここはメインイベントだから院長が出てきてやってくれたんだが、これが一目見た時からヤバい予感がする陰険ババア。いきなり開口一番ブチかましてくれる。「詰め物なんて取れてないじゃないの」

 ここでハッキリしておきたいけど、この女医がババアだからイヤな予感したわけじゃない。例え若かったとしても、この女はこういうタイプの陰険女に違いない。絶対自分がいつも正しい、反論は許さない、間違っているのは自分以外の誰かだ。こういう女はそれを信念に、周囲に害毒まき散らしながら生きている。

「お〜や、こんな虫歯つくっちゃって。あんたどういう磨き方してるの?」

「だから、そこが例の詰め物取れたところなんですよ」

「あ。そう? あと、こっちは詰め物欠けてなんかないじゃないの。あんた何言ってるのよ?」

「でも、口から銀の詰め物のカケラが出てきたんですよ!」

「あ、そう? これはねぇ、つまり…あんたに言っても分からないわね。何にも支障ないんでしょ? このままでいいわよ」

 このクソババア(笑)! 胸がムカムカしてきた。コイツ医者だからこれで勤まってるけど、ソバ屋か何かだったら客はとっくに帰ってるぜ。患者だって客だろ!

 しかし、いったん治療が始まるとムカついたなんて言ってられない。ここからは医者の思うがまま。患者は無力なのだ。痛くてヒ〜ヒ〜言うのを必死にこらえるのがやっとの患者には、もう医者に逆らう気力なんてない。ただ、これ以上痛い目に合わされないことを祈るだけ。そしてそんな時の歯医者の態度は、どう考えても治療に必要だからでなく患者を痛めつけて言うことをきかそうとする、サディストのそれのようにしか見えないのだ。一度終わったと見せかけて、念押しでまたギリギリ歯を削るあたりのフェイントのかけ方なんざ、イヤがらせとしか思えない。ババア、いつか殺すぞ(笑)!

 かと思うと知人の話では、要注意の歯医者というのが本当に存在していて、こいつらは女の患者に麻酔をかけて、服を脱がせたりイタズラしたり乱暴狼藉し放題らしい。しかも、それが野放しになってるというんだから腹が立つ。

 こういう事を見てみても、医者の常識って女子アナと同じ(笑)で普通の社会人のそれと同じとは思えないよね。こう言っては何だが、命や健康を預かる医者って職業はいつもセンセ、センセと言われているせいか、傲慢になりやすいところあるんじゃないか? あるいは、ちょっと世間の常識飛び超えたエゴ丸だしとか無神経とか。

 医者だけじゃなくって、学者にもそういうところあるよね。前に阪神大震災の後で、地震学者だか建築学の学者だかが、被害状況を見に神戸を訪れた様子をニュースで見たけど、これもすごかった。みんな肉親が死んだり財産失ったりしてガックリしきって、体を引きずるような思いで廃虚の片ずけをしているところにズカズカやってきて、「こりゃ〜見事に壊れてますなぁ〜」なんて言ってるんだぜ。よく殺されないなと思った。

 あるいは地震学者が堂々と偉そうにブチ上げた言葉もすごい。「地震学者と言うと地震を予知すると思うんだから。これだから素人は困る!」それじゃあ、あんたら必要ないじゃん(笑)。国からお金払って研究させるこたぁないね。みんなリストラしろ!

 また薬学の道に進んで、今じゃちゃんと研究員となった旧友と、久しぶりに飲んだときも唖然とした。

「毒物で本当に人が死ぬのか、学者だったら試してみたい気はあるよ。オウムの気持ちはよく分かる」…こんな奴ら即刻逮捕しろ! 野放しにしておくんじゃねぇ!

 学術至上主義って、時としていわゆる政治屋とよく似た発想になるんだよね。いわく、重要な事の前では多少の犠牲は仕方がない。だが、その「多少の犠牲」にされる方の身になったことがあるのか。それが自分の身に降りかかっても、こいつらはやるのか。

 やるのかもしれないな。それに野望や欲望ってことにかけちゃ、奴らだって俺たちと変わりない。そこへ来て、ある分野にかけては自分たちは特別な能力がある、「何でもあり」と思っているからね。

 でも、逆に言えば俺たちだって、「何でもあり」なら何でもやるんじゃないのか。ただし凡人の俺たちにとっては、自分に火の粉さえ降りかかってこなければの話だけど。

 

我慢を知らないケビンのでかいベーコン(笑)

 地下の秘密の研究施設で、生物の透明化を研究している科学者ケビン・ベーコンは、今日もその研究のことで頭を悩ましていた。生物を透明化させるなんて難しいだろうって? いや、実はもうそれはうまくいってるんだ。犬だのゴリラだの、地下の施設のオリの中には透明動物がすでにウヨウヨしている。それじゃあ、悩む必要ないじゃないかって? 違うんだな。この研究は軍からの委託で進められている。最終的には人間で実用化させるのが目標だ。その場合、ただ透明になるだけでは不十分だ。透明から可視状態に戻れなければ人間には使えない。ベーコンが悩んでるのは、透明から元の状態に戻す技術なのだ。

 今夜も遅くまでパソコンと向き合うベーコン。しかし、研究は行き詰まる。フト窓の外を見てみると、隣のマンションでは女が服を脱いでるじゃないの。おやおや…とベーコンたまらず窓にがぶり寄るが、女はそれを知ってか知らずか、もうちょっと…の微妙なタイミングでブラインドを下ろしてしまう。ケッ、ドケチ女め。あれだけ脱いだんだ、最後まで見せろよ減るもんじゃなし。

 しかし、これが幸いしたのかピンときた。ピンときたって言っても、アソコがピンと立ったわけじゃない。これくらいで立ったら中学生だよ。あの頃は辞書で「性交」とか「自慰」とか引いても立っちゃったもんなぁ。あぁあの頃に戻りたい(笑)。

 ピンときたのはケビンのベーコンみたいなナニじゃなくて(笑)、頭のほう。違う違う!カメの頭じゃなくって本当の頭だよ。いつまで続けてるんだ下ネタを(笑)。

 ベーコン、再びパソコンをカチャカチャやって、どうやら何やらのシミュレーションに成功したみたいなんだ。ヤッタ〜!

 思わず真夜中に電話をかけた相手は、一緒に研究の仕事をしているパートナーのエリザベス・シュー。夜中思わず叩き起こしちゃったんだけど、同じ研究者仲間だから問題ないんだよね。それに、電話の会話の調子から察するに、昔この二人には熱い感情が通いあっていたはず。しかし、シューちゃんのベッドには男がいた。その気配を感じたベーコンの胸中は複雑。でも、何をやっても自由さ、もう君と僕とは付き合ってるわけじゃないし…そうは思いながらもベーコンは何だか未練タラタラ。何となく昔のよしみで一発…てな感じでシューちゃんにリベンジしたい気分なんだよな。リベンジとくればシドニーで巨乳女子アナ相手に一発決めた西武の松坂です(笑)。

 そして、もう一方のエリザベス・シューのほうだって、果たしてフッ切れているんだろうか。彼女のベッドにいた男は、これもベーコンや彼女の同僚であるジョジュ・ブローリン。だけど、まだシューちゃんはブローリンと付き合ってることをベーコンに知らせてないのだ。…いつまで黙ってるんだよ俺たちのこと?別にいちいち公表することないでしょ?研究所じゃ他人よ。何で悪いことしてる訳でもないのにコソコソしなくちゃいけねえんだよ?…何となく納得できないブローリン。分かるよその気持ち。前は俺もそうだった。

 正直言ってシューちゃんにしたって、ベーコンにまだ少し未練はあるのだった。あの天才的な頭脳も魅力的。しかし、一方で彼は尊大で独善的で傲慢な男でもある。たぶん彼女が別れた原因もそれに耐えられなくなったからだろう。でも、それもこれも科学者としての自分の能力への自信からくるものでもあるだけに、その自信に満ちた物腰が男らしくセクシーに見える時もある。傲慢さが鼻につく反面、自信たっぷりの態度に惹かれる…あぁこれが女心か。要は女の言うことなんて聞いてやってる男はなぜかコケにされちゃうんだよ。いちいちうるさく言うのもイヤだから、どうでもいいよなんて言ってると。どうしたいんだか分かんないグジュグジュした女の子みたいな男とか言われちゃってさ。ひょっとして、何だかんだ言ったって結局ケビンのでかいベーコンに未練あるのか(笑)?

 さて、シューちゃんへの未練と隣の女の挑発による不完全燃焼で、ちょっと悶々としたベーコンではあったが、翌朝ポルシェかっ飛ばして研究施設にやってきた時はいつもの自信満々そのものの表情。それもそのはず、今日は例のベーコン開発による透明状態が治る薬の実験をやるのだ。鼻息も荒い。エリザベス・シューにもジョシュ・ブローリンにも得意満面の表情。唯一苦手としているのが、動物愛護の立場からいつもベーコンにかみついてくる女動物学者キム・ディケンズだが、まぁいいさ。

 オリに入ってて、いるんだかいないんだか分からない透明ゴリラを使って実験。こいつをおっかなびっくり扱いながら、ベッドに括りつけて例の薬を注入。すると、空中にこの薬の色で、ゴリラの血管がス〜ッと浮いてくるわけ。それが全身に広がっていくさまは美しいよ。だが、ゴリラはなぜか急に暴れだす。かなり苦しんでる。こりゃあもうダメだと思いかかったちょうどその時、脈拍も呼吸も安定。すると血管から血管へ、神経組織、骨、筋肉、内臓などなどなど…どんどん見えてくるじゃないか!

 この大成功に、ベーコンたちチームの意気が大いに上がったことは言うまでもない。しかし好事魔多し。この文章に再び登場の西武の松坂も、最高の一年目の次の年にサツのご厄介になったのは偶然じゃない。俺も最近ツキがあるみたいなんで恐いんだよな…って、てめえはそれほどツイてるつもりかって(笑)? ちょっと言ってみたかったんだよ、今までロクな事なかったから〜(涙)。

 

透明ってことは「何でもあり」ってこと?

 しかしワシントンの軍の上層部への報告で呼ばれたベーコンは、なぜかこの成功の事実をひた隠した。そのため、あんまりタラタラやってると他の学者に研究を移す…とまで軍の幹部ウィリアム・ディベインに脅かされるんだよ。同行したシューもブローリンも、実験成功を黙っているベーコンの真意を図りかねていた。でも、もし一たび成功したと明かしたら、自分たちは研究のフロントラインからはずされるとベーコンには分かっていたんだね。その前にやりたいことがある。この技術の発明者としてどうしても!

 翌日、研究所のチームの前で、ベーコンは透明化実験を次の段階に進め、人間での実験を行うと告げた。大丈夫なのかと詰め寄る動物愛護学者ディケンズに、軍から承諾を得たとウソをつくベーコン。そしてシューもブローリンも、そのベーコンの真っ赤なウソを肯定した。シューは何だかんだ言ってもベーコンの科学者としての夢をかなえさせたいがため。そしてブローリンは、そんなシューの気持ちを大事にしてやりたいがため。でも、たぶんブローリンとしては面白くなかっただろうね。でも、そんな彼の苦虫噛みつぶすような思いみたいのを、彼女は全く分かりゃしない。ブローリンのストレスは溜まる一方。俺は一体何なんだよ、日陰の男か? 昔は「ベストキッド」でラルフ・マッチオをケナゲに応援した可愛い子ちゃんだったのに、まるっきりデリカシーのない女になりやがったなエリザベス・シュー。

 それでは誰がその実験台になるの? それは決まっているでしょう。俺様よ、ケビン・ベーコン様よ。いちばん華やかな役割はみんなこの俺様が独占よ。

 で、自ら実験台の上に身をさらして、危険に身を投じるんだね。もちろん実験のためにスッポンポン。ケビンのベーコンは丸出し(笑)。ところが透明薬注射されると思いのほかこれがツラい。痛くって苦しくってのたうち回らざるを得ない。しかし苦しみもがいたあげくにカラダを激しく動かすさまが、つい「フットルース」に見えちゃったもんだから、みんなはなかなか異変に気づかない(笑)。どうも具合が悪そうだとみんなが気がつき始めた頃には、ベーコンの今までの不敵な笑みはどこへやら。脈拍もどんどんおかしくなって、こりゃヤバいかも?

 しかし、そのうち皮膚が透き通って筋肉や内臓が見え始め、ついには骨格だけになり、それも見えなくなって、実験台の上には一見何もなくなったみたい。

 透明になっちゃったんだね、彼は。

 さて、透明人間第一号となったベーコンはすこぶるゴキゲン。透明な状態で研究施設内をウロウロ。しかも見えなくなっても、いや、見えなくなってからのほうが態度がでかくなった。茶目っけ出したつもりか、ナマイキで大嫌いだった女動物学者ディケンズが居眠りこいてるところをコッソリ脱がそうとしたり、もうやりたい放題。何だかこいつの発想って偉い学者のそれではないな。まるで中学生の男子みたい。修学旅行で女子が入ってる女湯覗きたいとかいうレベル(笑)。男ならいくつになったってそうだけどね(笑)。でも、初めて同年配の女の子のアソコに毛が生えてるのを見た時は、知ってはいたけどショック(笑)。それはともかく、同年配だったらそういう時には女の子のほうが男よりず〜っと大胆なんだよね。一気に気持ちよく服を脱いで一糸まとわぬ姿になった時には、思わずタジタジ。いざとなると男っててんでだらしない。…まぁ、その点は今だって大して変わらないんだけどね(笑)。

 何の話してたんだっけ? そうそう…それでテストのための一定期間が終了したんで、今度はベーコンを透明から元に戻す番…という訳で、先日開発したばかりの新薬を注射することになる。ところがギッチョンチョン。注射した時の苦しみようが、透明化したときの比じゃないんだよね。もう大変。まぁ、今度はさすがに「フットルース」なんて言う奴はいなかったけど(笑)、血管、骨、内臓、筋肉…と、どんどん見えるようになってきたけど、ベーコン苦しくって大暴れで、脈拍も呼吸も異常な状態になっていく。

 もうダメか?というところまで来た時、急に脈拍も呼吸も安静に徐々に戻ってきた。こりゃあ良かったと喜んでいたら、せっかく筋肉あたりまで見えてきていたベーコンの体が、また少しづつ消えていくではないか。おっ?立ってきたぞ…と思いきや、期待も空しくしぼんでいく時のあの空しい感じに似てる(涙)。今回は徹底的に下ネタでいくことを決意したよ、俺は(笑)。

 ってな訳で元に戻ることができなくなっちゃったベーコン。当然こんな体じゃあ外へ出す訳にいかない。出られないとなると、それでなくともワガママなベーコン、イラだっちゃって荒れること荒れること。またまた登場、堤オーナーに甘やかされっぱなしの西武ライオンズの松坂みたいに、やりたい放題し放題になっちゃうわけ。悪いことしたんなら、身代わりなんか出さずに自分で警察に行けよ松坂! 巨乳女子アナなんか抱いてる場合じゃねえだろ。第一、シドニー五輪でメダル取れなかった分際で、何でスピードスケート銅メダリストの黒岩を身代わりにアゴでこき使えるんだよてめえは。

 それはともかく松坂…じゃなくってベーコン、施設の中で同僚を怖がらせたりするだけじゃ飽きたらず、ついつい特製ゴムマスクつけて、愛車ポルシェに飛び乗り外に出てしまう。もう同僚は大慌て。あいつ、薬の副作用で脳をやられたんじゃないか…なんて陰口も飛び出していた頃だったから、エリザベス・シューも気が気でない。たぶんてめえの家に帰ったんじゃないかと訪ねてみると、例のゴムマスクや服が脱ぎ捨ててあるんだよね。あちゃ〜、もうどこ行ったか分からなくなった。

 じゃあベーコンはその時どこで何してたかって言うと、ちょうど帰宅した時、例の隣のヌード美女が目に入ったんだね。で、透明になったら誰でも考えそうなことをした。

 スッポンポンになって、こっそり美女のお宅を訪問。そして彼女の後ろから…。

 キャ〜〜〜〜〜ッ!

 こりゃあいい…とほくそえんだかどうかは知らないが、ベーコンは自分がどんな立場にいるか、よ〜く分かっちゃったんだね。

 つまり、俺は今、何でもありってことだあな。

 

さすがコテコテの大家バーホーベン

 ポール・バーホーベンの映画なんだよね、これは。それだけでこの映画が、コテコテのアクの強いつくりだって事がよく分かるよね。で、制作予算のせいかどうか知らないが、お話は外に広がっていかずに、研究施設の中に中にと狭くこもったところで展開していく。だから、透明人間になってしまった男の苦悩とか悲惨とかは全然描かれていない。それどころか、ただ透明になっただけなのに無敵になっちゃって火をつけられても平気だし、何だか怪力になっていくから不思議。まぁバーホーベン映画だからそれでいいのか。それとも、あの薬にこんな副作用があったのかもね。

 その代わり、透明人間になってベーコンがやろうとすることが、どれもこれもセコい僕らレベルのチンケな野望であるところが親近感湧く。田代まさしが盗撮してるみたいな(笑)。でも、ひょっとしたら、人間なんてそんなもんじゃないか?

 一体、人間ってどうしてモラルで自分を縛っていられるのだろう? 高潔な理想があるから? 自分の信念があるから? 昔は確かにそういうこともあったかも知れない。でも、誰もがみな自分の欲望に忠実な現代、果たしてそんなもので人を縛れるのだろうか? それは法律とかいろいろあるからね。それにあんまり不道徳な自分って、他人に知られたくないじゃない。

 ってことは、誰にも知られなければやっちゃうんじゃないか?

 旅先で人がハレンチな振る舞いをするのは、そこでは誰もが自分のことを知らない匿名性があるからじゃないか? 分からなければ何でもやる。ネットがらみでウンザリするような事が次々起こるのも、どこの誰だか分からない気安さがそこにあるからだろう。何かを失うかもしれないとなれば、人はそれを恐れて自分の邪悪さを隠す。しかし、自分が誰だか知れず、何も失わずに済むのなら、人は「何でもあり」と思って好きに振る舞うだろう。例え邪悪なことでも。

 そんなありさまを、僕らレベルのチンケな野望というかたちで見せているバーホーベンは、おまえらだって透明人間になって女を脱がしたり犯したり、やりたい放題したいんじゃねえのか?と悪意ある笑みを浮かべてつぶやいているのだ。まぁバーホーベンはそこまで高尚なこと考えてやっちゃあいないかもしれないけどね(笑)。

 そんなケダモノは僕らみんなの中に棲んでいる。もし隙あればいつでも飛び出そうと身構えながら。いや、ケダモノじゃなくって松坂かな(笑)?

 

 

 

 

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