「レインディア・ゲーム」

  Reindeer Games

 (2000/07/03)


ジョン・フランケンハイマーの復帰

 昨年、突然ジョン・フランケンハイマー監督の新作「RONIN」が公開されたときは、おっ!と驚いたよね。だって往年のアクション映画の巨匠として、1960年代はかなりブイブイいわせてきた人だからね。いろいろ作品はあるけど僕がいちばん好きなのはバート・ランカスター主演の「大列車作戦」かな。その後、アメリカン・ニューシネマの時代の到来とともに何となく肩身が狭そうな感じになった。そりゃフランケンハイマーとニューシネマは合わないよね。1970年代もそんな感じで、後輩ウィリアム・フリードキンの大ヒット作の続編「フレンチ・コネクション2」をやらされるハメにまで落ち込むが、この「フレンチ・コネクション2」の意外な大好評でまたまた上昇気流をつかむあたり、やはり大したもの。それが大作「ブラックサンデー」に発展して、この作品が1970年代のフランケンハイマーの代表作になるんだから人間わからない。でも、この「ブラックサンデー」も日本じゃアラブ社会の反発をくらって上映禁止となり、それとは関係ないけど、その後フランケンハイマーは長きにわたる低迷期を迎えるに至る。コンスタントに作品発表の場は与えられてはいたけど、結果が出せなかったのが近年のフランケンハイマーだったんじゃないかな。

 だから昨年いきなりの「RONIN」発表と、それがB級作品ではなくロバート・デニーロ主演作というA級大作扱いでつくられたことは、長年のファンとしては意外でびっくりな1999年の「事件」であったことは間違いない。しかも、見た方にはおわかりのように出来映えもなかなか。今一番イキのよさを感じさせる韓国の「シュリ」あたりにも大きく差をつけ、アクション演出とはこれ、娯楽映画づくりとはこれ…とばかりにメンコの違いを見せつけるあたりは、真にさすがと言うにふさわしい。うまいんですよ。

 そのフランケンハイマーが今年も新作を撮った。それも当代きっての売れっ子スター三人衆を使ってバリバリにイキのいい仕上がりとくれば、注目せざるを得ないでしょう。

 それではお送りしましょう、「レインディア・ゲーム」です(笑)。

 

写真でしか知らない他人の彼女にあこがれて

 ベン・アフレックは出所も間近の囚人。ただしどんな罪で服役してるかと問うのはヤボと言うもの。「いい奴」らしさが今回も全開のアフレックに限って、殺人や強姦で服役の訳がない。案の定、シケた車強盗で足がついて捕まったという、まぁ言ってしまえばケチな小悪党。そりゃそうだよな、だっていい奴だもん。

 同房の囚人は、朝から晩まで得意になって何やらアフレックに言ってる。よくよく聞いてみると、彼には刑務所生活の中で文通のガールフレンドができたとか。で、アフレックと同時に出所した暁には、この彼女と早速デート&エッチという段取りになっているらしい。でも、こんな話やら彼女に出した手紙の内容などをクドクドクドクド聞かされっぱなしだから、アフレックも正直言って内容暗記しそうだしウンザリもしてる。この男、何だかスケベエそうなゲス男なんだけど、彼女ときたら写真で見る限りすごい美人!

 そりゃ〜他人がエッチする話なんて聞かされてもうれしくないし、ましてそれが美人とくれば楽しい訳がないよね。アフレック、思わず腕立て伏せに精を出して汗かくぐらいしか対策がない。タマキン重くなってるしなぁ。

 ところが出所がますます迫ったある日、アフレックに逆恨みした凶悪犯が刃物を持って暴れ、はずみでこの同房のラブレター自慢男が殺されてしまう。あともうちょっとで出所だったのに…さすがにそれ思うと、いい奴アフレック心が痛みます。タマキンも痛んでるんだけどね、はちきれんばかりに。

 で、出所の日。みんなには待ってくれてる家族がいる。でも、アフレックには誰もいないんだよな。しんしんと降りしきる雪が冷てえ〜。心が寒い〜。寂し〜。タマキンが痛え〜(笑)。

 ふと見ると、出所者たちを迎える家族たちの中に、あの同房ラブレター男のお相手美人もいるんだよね。かわいそうに、何も知らずに待ってるんだ。ほ〜、見れば見るほどキレイだな。そりゃそうだ、シャーリーズ・セロンが演じているんだもの(笑)。

 黙って駅までのバスに乗り込むアフレックだが、一人雪の中で立ちつくして恋人を待っているセロン嬢の姿を見ているうち、だんだんたまらなくなっていく。…待てよ、あいつ自分の写真を見せてないって言ってたな。ってことは、彼女はあいつの顔を知らないってことだ。…いやいや、いかん。そんな事やっちゃあ。…でも、せっかくの楽しみにしてたクリスマス。彼女は一人ぼっちか。悲しむだろうなぁ。…いやいや、そんな事、俺とは関係ない。…でも、彼女なかなかいい女だよな、抱いたらどんな感じだろう?…バカバカ、あの男は俺のせいで死んだっていうのに、何てバチ当たりな。…それにしても、タマキンがパンパンに張って、痛ぇ〜っ!

 ふと気がついたら、アフレックはバスから降りてセロンの前に立っていた。彼を見るセロン嬢。

 「ま、待った?」

 

自業自得とはいえお気の毒な展開

 久々の恋人との再会っていうのは、心トキメくものだよね。新鮮というかドキドキというか。その上、この囚人との文通恋人の場合は、長らく手紙で会話はあってお互い恋人どうしと納得し合っていても、初対面だもんねぇ。そのドキドキ感たるや…。しかもしかも、ベン・アフレックは実は文通すらしてなかったんだからね。もう心臓バックンバックン。でも、アソコの方がずっとズッキンズッキン。…やれやれ、今回はこんなのばっかし(笑)。だけどヘマをせずセロン嬢と調子を合わせていられたのも、同房のあいつが何から何まで得意になってクドクド教えてくれたから。聞いてる時はウンザリだったが、人間何が幸いするかわからない。そして話しているうちわかったんだが、セロン嬢何で囚人と文通なんぞ始めようとしたかと言うと、過去の苦い体験が彼女にそうさせたらしい。「あなたなら、私のカラダ目当てじゃないとわかったの!」

 その舌の根も乾かないうちに、モーテルのベッドになだれ込む二人(笑)。アフレックはとにかく溜まってるからスゴイ。うらやましいよ、まったく(苦笑)。セロン嬢のヌードもいいですね(笑)。まぁ、とにかく恋人たちの夜は更ける。

 それからは、まるで夢のよう。愛のある暮らし…ってやつですよ、いつもベタベタ。何がおかしいんだか知らないけどニヤニヤ。俺にも夢のような人生が巡ってきたんだな〜とうれしくなるアフレックだが、他人から奪った幸福だけにこんな事いつまでも続かないとは思ってる。せめて今のうちだけ、せめてクリスマスが終わるまで…。ムシがいいとは言いながらも、このアフレックの気持ちわからぬでもない。一度この気分味わっちゃったら、もう後戻りはできないんだよねぇ。

 ところがアフレックがセロン嬢とのお買い物を終えて、一足先に二人の「愛の巣」であるモーテルの部屋に戻ってきてみると、いきなりボカスカ。誰かが部屋の中に潜んで、アフレックを痛めつけるわけだよ。な、何だこいつら。部屋にはうさんくさい連中ばかり。そこに愛しい彼女もベソかきながら連れ込まれたじゃないか。「ごめんなさい!ごめんなさい!」 そしてリーダー格の長髪男ゲイリー・シニーズが、おもむろに口を開く。

 「俺の妹、ずいぶん可愛がってくれたみたいだな」

 セロン嬢はこのシニーズの妹なんだよ。で、シニーズは札つきのワルなんだよ。こいつは妹と囚人の文通のお手紙を見て、その相手がかつて片田舎のカジノで働いていたことを知る訳だよ。するってえと、こいつに手引きさせればカジノ強盗が簡単にできるんじゃねえのか?

 ところが残念ながら、アフレックは偽物。だから、そんなカジノなど知りもしない。急転直下ヤバくなったと気付いたアフレックは、自分が偽物であると主張するのだが、もう誰も聞く耳持っていない。自業自得とはいえ何でこんなことになったんだと、さっきまでセロン嬢の肉体をオモチャにしていいように弄んでいたくせに、アフレックはボヤくのボヤかないのって。だけど、そのうち彼も気付いた。もうこの連中の計画をここまで知った以上、なまじ偽物だなんてバレたらその場で殺される。こうなったら徹底的に偽物になり切るしかない…と。

 

 正直言うと、ここまでしかかけないんだよこの作品は。あと何をかいてもネタばれになってしまう。だからここまで。でもこれでも十分かもよ。大事なことは全部書いてある。

 シャーリーズ・セロンはねぇ、思わず好きになっちゃうキュートぶりがいままでで最高かも。すっごく魅力的。そして、脱ぎまくります!

 ゲイリー・シニーズも最近「ミッション・トゥ・マーズ」で主役やったり、善人役が多くなってきたけど、その「ミッション〜」もあまりよくなかったし、今回久しぶりの思いっきりの悪役なかなかよかったなぁ。こうでなくっちゃね。

 とにかくケレン味たっぷりで、フランケンハイマーがさすがなんだよ。ベテランの味。「RONIN」ではアクションの冴え見せたけど、今度はアクション抜きでもサスペンスの妙で酔わせてくれます。しかも、これだけイキのいい素材(役者)を使って、キッチリ今の映画にしているのが見事。懐かしさはあるけどボケた映画…なんかにゃしてないよ。

 そしてベン・アフレックねぇ…。彼とフランケンハイマーって、どうしても合わないんじゃないかと思ってたんだけど、どうしてなかなか。しかも、エンディングになってハタと膝打つような、「いい奴」アフレックじゃないとできないような設定になるんだよね。

 そう、いい奴だよアフレックって。そして、時はクリスマスなんだ…。

 

 

 

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