「エンド・オブ・デイズ」

  End of Days

 (2000/01/03)


落ち目の男たちのリターン・マッチ

  アーノルド・シュワルツェネッガーの映画って、みなさんどう思います? 実は私、「コマンドー」でシュワ開眼してからずっと彼をひいきにしてるんですけど、ちょっと最近失速気味じゃないかなと思ってるんです。特にあの「バットマン&ロビン」なんかは、かなりがっくりした覚えがある。こんなはずじゃなかったのにねぇ。

 だから、今回の新作はかなりこわごわ待っていたというのが正直なところ。最初はかなり期待してたんですよ。だって、監督がピーター・ハイアムズだったから。

 ピーター・ハイアムズ、知っている人は知っている。「紳士だったら知っている、“服地はミユキ”と知っている」って、日曜日朝からやっている日本テレビの「ミユキ野球教室」のテーマソングじゃないけれど(ミユキ毛織ってスポンサーが提供してたんだけど、あの番組まだやっているのか?)、映画ファンの胸にはあの快作「カプリコン1」でバッチリ刻み込まれてるよね。それだけじゃない。西部劇「真昼の決闘」を宇宙SFに移植した「アウトランド」とか、軽いタッチでオモシロイ刑事もの「シカゴ・コネクション 夢見て走れ」とか、地味だけど確実に楽しめる良作を連発してきた職人なんですよね。

 だから、こんな職人と組んだシュワ、今回はいけるんじゃないかと期待してしまった。ところが試写会後、映画ファンのサイトの掲示板にあふれんばかりに書き込まれていたのは、この映画の悪評ばかり。ホントかよ〜。

 そう言えばこの人の最大ヒット作って「2001年宇宙の旅」の続編「2010年」。不利とわかっていながら受けて立ったハイアムズは偉いと思うけど、そんなことデリカシーのない若い映画ファンなんかわかりゃしない。「2001年」と比べると劣る…なんて平気で言って。おまえそんなこと大発見だとでも思ってるのか小僧! ただ、そんなイメージから最近は不遇の感がぬぐい去りがたく、特にジャン・クロード・ヴァン・ダム映画を連続して撮るハメになったあたりで、明らかに落ち目だな〜という感じになってしまった(それでも「タイムコップ」は傑作だよ)。

 誰かが言ってたっけ。この映画、1999年以内に見なけりゃ魅力半減だよって。私はたまたま今、札幌に一人。見知らぬ街で1999年の終わりを目撃しようとしている。ならば、この映画に気分はピッタリではないか。

 私はためらいなく1999年最後の映画にこの1本を選んだ。

 

シュワのリーサルウェポンが悪魔と対決

 いきなりバチカンからおごそかに始まって、これは本格的悪魔映画なんだぞー、馬鹿力シュワ映画とは違うんだぞーと言いたげなオープニング。1000年紀の区切りに悪魔がちょいと自由になって、そこで選ばれた女と悪魔がセックスするとこの世の終わりが来るぞというありがたーい予言。同じころニューヨークで女の赤ちゃんが産まれて、案の定それが悪魔と赤い糸で結ばれた彼女なのでございます。以来20年、悪魔陣営はこの女の子をがっちりキープ。神様陣営はこれをゲットするべく虎視眈々というのが前振り。

 でも、ニューヨークってやっぱりこういう映画にピッタリだよね。世界がどうしたって話は、やっぱり東京の高円寺あたりで始まっちゃいけない。それにニューヨークってとてつもなくでかくて、得体がしれなくて、やたら最先端となぜこんなのが残ってると思うような古いものが同居してる奇妙な街。だから、舞台としてピッタリなんだよね。

 一転、1999年のニューヨーク。いきなり登場すると口に拳銃くわえちゃって深刻な表情のシュワ。しかし、シュワといいエドワード・ノートンといい。開巻いきなり口に拳銃くわえて登場してくる映画が2本も公開される今年の正月映画って…。

 でも、私はこのシュワ登場シーン、全く別な映画を連想した。そう! 「リーサル・ウェポン」第1作目、メル・ギブソンもこれと全く同じシチュエーションだったよね。彼もそうだったように、シュワも妻子を殺されドツボにハマった男。今じゃ刑事をやめて警備会社に勤めるコワモテ男。

 でも、こういうオチこぼれちゃった男を描いた映画っていいのが多いよね。何だか私、世評とはうらはらに、これいいんじゃないかと期待が戻ってきた。もう何にも信じられない。誰も信じないとかたくなに思いこむ男。そんな気持ちは俺でもよくわかる。俺だってそう思ってるもの。嫁さん殺されちゃいないけど。

 で、この男が同僚たちと警備をまかされたのが、株で大儲けのVIPガブリエル・バーン。しかし、こいつは悪魔だったんですね。これに先立つシーンで悪魔に乗り移られているのを我々は見ている。悪魔になったらいきなりレストランにいる女の唇を奪い、乳をもむ。

 ブチュ〜〜〜〜ッとディープ・キス。

 ムギュ〜〜〜〜ッとオッパイわしづかみ

 俺も悪魔になりてえ〜っ(笑)。

 例の女の子と交わるためには人間の男の体がいるってわけ。じゃあ悪魔ってナニ持ってないの? 貸そうか? 俺、最近使ってないし。俺のなんかかわいそうに単なるゴムホースだよ、放水用(笑)。不憫なわがセガレ。

 話戻ってなぜか警備中のバーンを狙撃しようとする刺客現る。これをいかにもシュワ映画らしい無茶なアクションで捕まえるが、捕まえてみれば落ちぶれ神父。しかもしゃべったはずなのに舌がない。さすがのシュワもこりゃ変だと気づく。

 そんなこんなしているうちに悪魔陣営は準備ばんたん。こういう映画だとお座敷が必ずかかるウド・キアーを筆頭に、ミレニアムに向けて用意周到です。

 おかしいとにらんだシュワは、なぜか金にもならない捜査を続け、この悪魔のミレニアムのからくりに気づく。ねらわれている女の子の身元も割り出すが、駆けつけたところにバチカンから女の子を殺しに来た刺客とハチ合わせ。ここでまた大立ち回り。ところで、この女の子の身元を割り出すのがあまりに安易なので笑っちゃう。札幌のかのこサンもここを指摘してました。

 とりあえず教会に逃げ込むが、神父のロッド・スタイガーは人はいいけど、ちょっと頼りないんじゃないかい。

 そんなシュワの周辺にはガブリエル・バーンも現れてきて、耳元でそっとささやく。「神様がおまえにナニをしてくれた? 妻子はどうなった? 俺ならおまえの家庭を元通りにしてやるよ。どうだ、俺と組まないか? 何だったら俺の背番号33を譲ってもいい(笑)」

 でも正直言って、江藤への長嶋のクドキは愚にも付かないけど、このバーンの悪魔のささやきは説得力あるねえ。いいこと言ってるもん。バーンという魅力ある役者がやってるからなおさらだけど、ちょっと話聞いてみたくなるよね。せめて複数年契約かどうか確認してみるくらいはいいんじゃないか?

 それにホントに神が一体何をしてくれたって言うんだい。年末NHKで再放送された「映像の世紀」ってドキュメンタリーは、世界各国に残されたフィルムやビデオを編集してつくられた20世紀の歴史の証言で、いつ見ても圧巻なのだけど、これなんか見てると愚行の連続だった人類の歴史、20世紀の歴史の中で「神」の演じた悪魔的な役割の大きさに唖然としてしまう。「神」の名の下にどれだけ愚かなことが行われてきたのか。どう? ガブリエル・バーンの言ってることが、そんなにはずれていないんじゃないかと思えてこない? 「エンド・オブ・デイズ」ってもうとっくに今の神様の下で実現してるんじゃないか。

 

みんなホントに見えてるのか?

 そんなバーンのおいしい話に苦悩するシュワ。演技力はないけど、だからこそこの役柄でこういう芝居を一生懸命しようとすると、不器用さがかえって「無法松の一生」みたいでグッとくる。いいじゃない!

 そう言えばハイアムズってアクションのキレもさることながら、ちょっとしたところににじむ人情味がいいんだよね。「ハノーバー・ストリート」での女房を寝取られた男と寝取った男とのナチへの潜入作戦の中で芽生える友情。泣けたねぇ。そして、あの「2010年」だって、宇宙船の中で緊迫したシーンの中に、ポツッとロイ・シャイダーが「ヤンキー・スタジアムのホットドッグうまかったなぁ」って言うくだりがあって、グッときちゃうんだよね。それを失敗作だなんて切って捨てちゃうガキは何もわかってないんだよ

 結局、単身悪魔との戦いに身を投じることを決意。いきなり銃器なら弾薬やらをかき集め始めるのには笑った。悪魔と戦うときでもまず武装…って発想は、シュワちゃんに限っては正しいです。私もうれしそうに武器集めてるシュワにニコニコ。やれやれやれ〜っ! 

 ニューヨークの地下での大アクションはやっぱりすごい。しまいにバーンの体はボロボロだけど、やる気は十分。でもそれじゃあ、もうセックスできないんじゃない? オ○ン○ンもとれちゃってると思うけど。人ごとながら心配になっちゃった。俺もそういう場面じゃずいぶん失敗して女に失望されちゃってるからね。うっうっ。

 最後の最後にシュワがとった選択は、ちょっとホロリときちゃったね。“生かせ、殺すな”ってテーマは考えてみれば「ターミネーター2」にも流れるシュワ映画最大のテーマなんだ。もしそう考えるなら、オウムの愚劣な事件を含め、世界各地の紛争も起きなかったはず。およそ世界中の宗教家と言われる人々は、自分が恥ずかしいとは思わないのか。恥ずべきじゃないのか。俺はハッキリ言って怒ってるんだよお前らに。

 もっとガッカリなのは、この映画の前評判。大体みんな、「大味でどうの」とか言うのだろ? ホントに映画見てから思いついた感想か? 見る前から思いついた考えじゃないのかよ?

 例えばローリング・ストーンズの新作CDが出ると、いろんな雑誌のCDレビューに感想が載るけど、どれもこれも「う〜ん余裕の一作」とか「貫禄だねぇ」とかそんなのばっかし。それ実際聞いてないってミエミエじゃん。最初から用意してある感想だよ。

 ハッキリ言って今回のシュワ映画に対するみんなの感想も、ホントにこの映画見て書いたとは思えないのが多かった。何だか自分の言葉じゃない、血が通ってない感想だよ。金もらってやってる映画マスコミの連中だったら、無能な輩だから無視しちゃっていい。だけど、みんな映画好きで見てるんだろ? そんな具にもつかない感想書いて何になるんだよ。

 新春早々厳しいこと書いちゃったけど、もっと自分の目で見よう。自分の言葉でしゃべろうよ。2000年なんだからさ(笑)

 

 

 

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