「スター・ウォーズ」の逆襲 !

"STAR WARS" Strikes Back !

「スター・ウォーズ/エピソード1:ファントム・メナス」

"Star Wars - Episode 1 : The Phantom Menace"


The Phantom Menace

映画館主・Fはこう見た

F's Review of "Epiode 1"

最近、テレビのワイドショーで野村サッチーの映像が出てくると、決まってあの有名なダースベイダーのテーマが流れてくる(笑)くらい、「スター・ウォーズ」ブームはちまたにわき上がってる様子。本特集でもみなさんノリにノッて健筆をふるっていただきました。それでは、いよいよ私自身がどう見たのかを話さねばなりますまい。しかし、「スター・ウォーズ」がらみのことを話すなると、長い話になるんですよ。

(まだ映画を見ていない人も安心して読めるようになってます!)


 

 どんな映画にも弱点はある

 または私は如何にして期待するのを止めて「スター・ウォーズ」を軽視するようになったか

 Every Movies Has a Weak Point...

 or : How I learned to stop expecting and slight "STAR WARS"

 (きわめて私的な「スター・ウォーズ/エピソード1」論)

 夫馬 信一

 by Shinichi Fuma

 

 ヒット作の幻影(ファントム)

 1977年夏、海の向こうから津波のように押し寄せてきた「スター・ウォーズ」大ヒットの知らせは、たちまち日本全国を飲み込みました。洋画のSF映画やファンタジー映画をテレビで見るのが楽しみだった私は、この映画に関する報道をすべてむさぼるように読んだものです。いわく合成の継ぎ目が見えない特撮、不思議なキャラや乗り物、典型的スペース・オペラ物語…。

 普通、アメリカで夏ヒットした作品は、日本では正月映画の目玉になるのが通例でした。しかし、20世紀フォックス日本支社はこれを翌年の夏休み作品にセットしたのです。何と1年も待たされる! その間の日本のファンの飢えを満たすべく、日本の映画評論家や映画ジャーナリズムは、どんどんアメリカへ行って「スター・ウォーズ」を見てきた!的な報道を繰り返していました。その急先鋒が自らSFマニアを自認する石上三登志氏です。石上氏は、おそらく「スター・ウォーズ」の全ショットの中で活字にしていない箇所はないと言うくらいの詳細さで、すべてを語り尽くす大ハシャギぶり。これは、もはや批評家のやることではありません。そして批評家たちは口々に言うのです、私は5回見た!10回見た!20回見た!50回見た!…でも、みんながアメリカまで見に行けるわけじゃありません。

 で、やってきた日本初公開の日。なぜか、マスコミも映画ファンも盛り上がらない。映画館で実物と対峙することで、疑問が解けました。

 一言で言って、これはもうとっくに見ちゃった映画だったのです。

 ストーリーからキャラクターからテーマから、隅々まで語り尽くされてしまっている。酒場に入ったらエイリアンのバンドがスイング・ジャズみたいなのを演奏しているなんてことまでわかってる。ビジュアル・イメージだって、とっくに雑誌のグラビアやテレビで見ている。そもそも「スター・ウォーズ」自体、いつか見た映画的記憶を再構成したような内容で、その再構成の仕方にセンスがあったから受けた映画だったことも、事態をさらに悪化させました

 リアルタイムに見た人なら、日本中に流れた一種シラけたムードを憶えているはず。もし、最初から爆発的ブームだったなんて言っている人がいたら、それは長い歳月のうちに記憶が風化したせいで、1978年夏の時点では「スター・ウォーズ」はもう時代遅れだったんですね。私も、もっと早く見ることができていればよかったのに…とかなり腹立たしく感じていました。そして日本の映画ジャーナリズム、わけても前述の石上氏は、何らかの責任をとってしかるべきではないかと正直言って今でも思っています。

 

 予想外の衝撃と予定調和と

 そして1980年夏、「帝国の逆襲」がやってきました。しかし、もはや社会現象のように熱く語る者はいません。「アルマゲドン」とか「プライベート・ライアン」みたいな、ただのヒット映画だったのです。いささか苦い思い出が脳裏をよぎりながら、映画館の座席を確保する。やがて始まった映画は…ややっ!?

 画面いっぱいの宇宙空間にジョン・ウィリアムスの有名な音楽、そこにいきなり「STAR WARS」でなくて日本語で「スター・ウォーズ」と出たんですよ。わかります?この衝撃。私は一瞬、日本語吹き替え版上映の劇場に入っちゃったかと焦りましたよ。ジョージ・ルーカスが海外のファンのためにと、わざわざやったお節介らしいんですけど、人騒がせな…。しかし「帝国の逆襲」、ビックリさせられるのはまだまだこれからだったんです。脳天気で楽しく勝利する単純な物語が展開するとばかり思ったら、いきなりルークは雪の中で死にそうになるし、次々とろくな事が起きない。しまいには、ダース・ベイダーが自らの秘密をルークにうち明けるエンディングにマジでビックリ。その直後、ルークの身に降りかかる災難も「えっ?」とドギモを抜く展開。しかも、何にも解決されないまま「つづく」となってしまう結末には、バカにして見てただけに衝撃を受けました。「スター・ウォーズ」侮りがたし。改めてそう思いましたね。

 さらに待って1983年夏、三部作完結編(全部で9作とは聞いていましたが)と銘打った「ジェダイの復讐」が公開されました。当然あの「帝国の逆襲」の後ですから、期待しますよね。でも、これが一応の完結編だとくれば、カーボン・フリーズされたハン・ソロは助かってあたりまえ。冒頭まもなくジャバ・ザ・ハットに捕らえられるレイア姫も、助かってあたりまえ。そこに何のスリルがありましょう。「帝国の逆襲」とは対照的に、まるで日本のテレビドラマの最終回のように、予定調和的に事件が解決していきます。おまけに、ルークとハン・ソロがレイアを挟んで恋敵になりそうだった関係も、ダース・ベイダーの爆弾発言があったあとではご都合主義としか思えない設定で解決しちゃうし。衝撃のダース・ベイダーのお面の中身大公開にしたって、中から出てきたのが今まで見たこともないただのオッサンの顔じゃ、あれでどうやって衝撃を受けろと言うんでしょう? あれがオビ・ワン・ケノビだったら、そりゃビックリでしょうが。ラストも、あれだけ壮大なサーガ(大河物語)だって言ってたわりには、「森の木陰でドンジャラホーイ」みたいなフヤけた幕切れでシラーッとしたし(しかし、後述する「特別編」でこのへんの問題がある程度解決されているようですが)。

 でも、考えてみればもう面白そうな趣向は出し尽くしたし、このあたりで年貢の納め時かも。ルーカスもボロを出す前にやめられてよかった。この時には、次にちょっと休んでから「エピソード1」をつくるなんて話、私はまるで信じちゃいませんでした。

 

 ルーカス王国に迫る脅威(メナス)

 その後、ルーカスは何をやっていたかと言えば…。黒澤 明がインタビューなどでルーカスの近況を聞かれると「彼は今、ルーカス・ランドの実現のために一生懸命だよ」と答えていたのがこの時期です。ルーカス・ランドねぇ。想像はつきます。50年代ロックンロールとスポーツカーのゾーンが「アメリカン・グラフィティ」、そしてもちろん宇宙で遊ぶ「スター・ウォーズ」、秘境探検が売りの「インディ・ジョーンズ」ゾーン。ここに、剣と魔法の国の「ウィロー」ゾーン、アメリカン・コミック風味の「ハワード・ザ・ダック」ゾーンとくる。

 ところが頼みの後者2作がコケてしまった。特に「ハワード・ザ・ダック」のコケかたはハンパじゃなくて、主演のリー・トンプソンのスター生命をも奪いかねないひどさ。これは正直言ってかなりな打撃じゃなかったかと思います。その後、ディズニーランドに「スター・ツアーズ」が出現し、マイアミのMGMスタジオで「インディ・ジョーンズ」のアトラクション(というより、新婚旅行で見た友人のビデオから察すると、ほとんどドリフの全員集合。)が登場したところを見ると、どうやらルーカスの野望は潰えたようです。コッポラに撮らせた「タッカー」もヒットするような映画じゃなかったし。この時期以降、ルーカス実はかなりヤバかったんじゃないのか…。もう撮らないんじゃないかと思われていた「エピソード1」が今頃登場する、しかも22年ぶりにルーカス自ら監督…という背景に、私はどうしても、これらの事情を重ね合わせて見ざるを得ないのです。折角の「エピソード1」にも、裏切られ続けた私の心はもはや冷え切っていました。

 そうは言っても、こういう映画をつかまえて、やれ中身がないとかドラマがないとか言う輩に組みするのもイヤだ。「ジュラシック・パーク」公開の際に人間ドラマが描けてないといった批評家がいたけど、みんな恐竜見にきてるんでしょ? ベルイマンやアントニオーニの「スター・ウォーズ」見たい奴いる? 「エピソード1」に愛の不毛だとか神の不在だとか描かれたら見たいかい? 物事は道理をわきまえたうえで言ってもらいたいもんだよな。それに、同じ特撮を駆使したハリウッド大作でも、「スター・ウォーズ」と「アルマゲドン」の区別はちゃんとつけるべきだと思うんですよね。

 また、カンヌ映画祭の記者会見で、ある女の審査員が「エピソード1」について聞かれていわく。

「地上に今、戦争をしている国があるというのに、宇宙戦争の映画ですって!?」

バカだねぇ。誰だか知らんが、こういう歩く岩波ホールみたいな奴にはなりたくないです。

 とにかく、「スター・ウォーズ」をめぐる過去のいきさつから、「エピソード1」に対する私の思いは愛憎相半ばする複雑なものとなっていました。どうせ駄目だと思っている自分と、もの凄い期待感を必死に抑えている自分。盛り上がっている周囲をシラケて見つめる自分と、一緒に大騒ぎしたい自分。…えーい、どっちだどっちだ。本当のところ「エピソード1」は面白いのか、そうでないのか。どっちなんだ!

 

 どっちか知りたいひとは・・・こっち (まだ未見の人は見ないで!)

 

 

 Every saga has a beginning... 旧「三部作」世代からのメッセージ

 

 Every generation has a legend... 新世代からのコメント

 

 Every journey has a first step... 北米での反応

 

 A long time ago in a galaxy far, far away... 鑑賞の手引き

 

 May the force be with you... 撮影現場からの証言

 

 

 

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