お盆緊急特集

Finally, His EYES Were SHUT...

"Hello, Dave..."

Stanley Kubrick, 1928-1999

and His Last Film"EYES WIDE SHUT"

追悼スタンリー・キューブリック&

「アイズ ワイド シャット」小特集

 


 昨年の黒澤 明監督の訃報に追い打ちをかけるかのように、今年3月、“最後の巨匠”スタンリー・キューブリックがこの世を去りました。謎に包まれた遺作「アイズ ワイド シャット」を遺して…。

 「DAY FOR NIGHT」では、この「アイズ ワイド シャット」日本公開に寄せて、緊急小特集を組ませていただきました。私たちの国のお盆の風習にちなんで、本当に急ごしらえではありますが、この小特集をもって巨匠の偉大なる生涯を映画ファンのみなさまとともに偲びたいと思います。

 

CONTENTS

 

私に深く影響を与えた巨匠

The Deep Influence from Kubrick

安東 征子 Motoko Ando

 

“人間の本質”を追求したキューブリック

Desperately Seeking "Human Nature"

MAO

 

先入観なしの「アイズ・ワイド・シャット」評

Review of "EYES WIDE SHUT" without a Prejudice

無花果(いちじく) Ichijiku

 

君は本当に眼を開いているか?

My Personal Opinion about "EYES WIDE SHUT"

and Mr. Stanley Kubrick

夫馬 信一 Shinichi Fuma

 

 

(C)1999 Motoko Ando, MAO, Ichijiku

and FUMA'S WORKSHOP


 私に深く影響を与えた巨匠

  The Deep Influence from Kubrick

 安東 征子

 by Motoko Ando

 

 キューブリック作品は最近になって観始めているため軽薄な意見になってしまうかもしれませんが・・・

 「アイズ・ワイド・シャット」これはキューブリック本人にしてみれば最高傑作らしいですが、そう思われる人はほとんどいないと思う。18Rというだけあり、ソノ場面はかなり濃厚なところもあった。が、そこはさすがスタンリー・キューブリック、いやらしさを感じさせない相変わらずのクリアな世界を築き上げていた。性が大々的に問題として掲げられているが、あまりそういう難しい事を考えず(むしろ違った、もっと広い視野で)観られる映画であると思う。

 私にとって映画とは娯楽性というよりもむしろ、観る人の価値観に訴えるかどうか、を追求します。キューブリック氏の作品はどれも私の深いところに影響を及ぼしてくれました。

 特に2001年宇宙の旅、これは自然科学とりわけ宇宙物理にちょっと詳しい自分にとってものすごく衝撃的な映画でした。

 彼は性とか愛とか、ある意味狭義的なテーマよりも2001年・・・とか時計じかけの・・・、そして「博士の異常な愛情」

未来的ななにかを示唆するような映画のほうに私は魅力を感じるし、得るものが大きいと感じた。

 不謹慎かもしれませんが、先見の明に富んだキューブリック、世界が窮地に立たされている世紀末の彼の死は意味深いものだったと思う。というのも死による一層の著名化により、彼の映画に興味を持つ人たちが増えるから。かく言う私もその一人なのですが。

 

安東 征子ジャン・レノ・マニアを公言する札幌の映画ファン。彼女主宰のホームページは札幌の映画公開情報など盛りだくさんで、映画好きには珍しい理数系というプロフィールにも関わらず熱い映画評はまことにユニーク。

 

 MOTOKO'S MOVIES DOCUMENT

 http://ha8.seikyou.ne.jp/home/mokko/

 


 

 “人間の本質”を追求したキューブリック

 Desperately Seeking "Human Nature"

 MAO

 by Mao

 

 今回「キューブリックについて書いて!」と頼まれたとき「何を書こうかと?」正直悩みました。あれを書こうこれを書こうと考え迷っているうちに自分が見たキューブリックの作品でキューブリックを勝手に解釈していることに気付いたんです。そんな考えに至るほどキューブリックの世界は広く、深いものでした。

 そんな理由でキューブリックの簡単な作品リストと、その中で自分の観た作品を示しておきます。●が自分の観た作品、○が観ていない作品です。この機会にほかの作品も観ようと思ったんですけど(特にバリー・リンドン)全部レンタル中で・・・。ちなみに()内の賞というのはキューブリック本人についての賞で他の作品についても受賞もしくはノミネートされているものもあります。

 

非情の罠 (55) 監督/脚本/撮影

現金に体を張れ (56) 監督/脚本

突撃 (57) 監督/脚本

スパルタカス (60) 監督

ロリータ (61) 監督  

博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか (63) 監督/脚本 (アカデミー賞 監督賞, 脚色賞 ノミネート NY批評家協会賞 監督賞受賞)

2001年宇宙の旅 (68) 監督/脚本/製作 (アカデミー賞 監督賞, 脚色賞 ノミネート,特殊視覚効果賞 受賞)

時計じかけのオレンジ (71) 監督/脚本/製作 (アカデミー賞 監督賞, 脚色賞 ノミネート NY批評家協会賞 監督賞受賞)

バリー・リンドン (75) 監督/脚本/製作 (アカデミー賞 監督賞, 脚色賞 ノミネート)

シャイニング (80) 監督/脚本/製作

フルメタル・ジャケット (87) 監督/脚本/製作 (アカデミー賞 脚色賞 ノミネート)

アイズ ワイド シャット (99) 監督/脚本/製作

 1997年 ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞・特別功労賞受賞

 

 キューブリックの映画というと“人間の本質”というテーマが多いと思うんです。その”本質”というのが”人の意識の危うさ”なんです。テーマだけ見ると他にもいっぱい類似作品はあるんですが、キューブリックが本当にすごいのはその表現の仕方なんです。映像もすごいんですが、何より音楽の使い方がすごすぎる。何がすごいのかというと、誰もが知ってるような音楽をその曲の全く両極端に位置する”危うい人”の表現に使うんですから。これはすごいと言うより怖いと言っていいでしょう。”心の和む音楽”と”危うい心”を比較することで、そのギャップの大きさ、いかに危ういかを観客に突きつけるんです。

 またキューブリックの作品はブラックユーモアが非常に多く、これはキューブリック自身が人類に明るい希望を持っていなかったためではないかと思うんです。そのことでキューブリック自身非常に苦しんだんではないでしょうか? これは「フルメタル・ジャケット」を観てものすごく感じました。ここからは自分勝手な解釈ですが、この映画の主人公ジョーカーってキューブリック自身なんです。つまり普通の人(ジョーカー)が”異常な環境(戦争)”に放り込まれたとき、その人の心はその環境に飲まれてしまうという結論こそが、人類に対するその当時のキューブリックの結論なんです。またジョーカーの苦しみこそがキューブリックの苦しみなんです。

 ではこのように人類に対して否定的なキューブリックの作品が何故多くの人の心つかみ、熱狂的なファンができるのでしょうか?またヤン・デ・ボン監督の映画「ツイスター」に「シャイニング」が登場するのは有名ですが、このように映画界への影響も決して小さいものではありません。それはやはりキューブリックの苦悩、苦しみが伝わり、みんなが共感するからではないでしょうか? 否定的な映画を創るキューブリック本人が一番苦しい思いをしていることに皆が気付いているからこそこんなにも人の心つかんでいるのでしょう。

 キューブリック本人は「アイズ・ワイド・シャット」という遺作を残しこの世を去りました。キューブリックは87年に”人類に救いはない”と結論を下しました。つまりキューブリックは救われなかったんです。それから10年以上たち、死期が近くなるににつれて87年とは別の結論にたどり着きました。この結論で初めてキューブリック本人は救われたと思います。そしてそのことを皆に伝えたかったのでしょう。だからこそ「アイズ・ワイド・シャット」という映画ができたんです。

 

 最後に是非このキューブリックの戦いの証である作品たちを観てもらって、そしてその戦いに勝利とまではいかなくても、希望を持つことのできたキューブリックの姿を「アイズ・ワイド・シャット」の中に見つけて欲しいです。 

 

MAO福岡市に住む映画ファン。「スター・ウォーズ/エピソード1」特集に次いでの登場で、データの裏付けによる冷静な映画評が特徴です。

 


 Jump to :

  無花果・Ichijiku

  夫馬信一・Shinichi Fuma

 

 

 to : Review 1999

 

 to : Classics Index

  

 to : HOME