Silent Night, Horror Night....

featuring "THE BLAIR WTCH PROJECT"

「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と

映画の新・千年紀<ミレニアム>


F'S REVIEW

では最後に、Fこと私が見た「ブレア・ウィッチ」を包み隠さずお話します。

 

まだこの映画をご覧でない方は、

ここから先はお読みにならないでください!


 

 

 「ブレア・ウィッチ」悪夢の森の彼方に

 Over the Nightmare Forest

 夫馬 信一

 by Shinichi Fuma

 

 みなさん、松竹東急系の劇場に最近行かれた方は、あの奇妙な予告編をご覧になった覚えがあるんじゃないかな。

 とにかく真っ暗。そして大学の映画学科の生徒3人がドキュメント映画を撮りに森に入って行方不明になったが、1年後撮影済みフィルムだけ出てきた…というコメント。そこに女の子のおびえきった声が聞こえてくる。

 「マイクのママ、ジョシュのママ、それに私のママに謝りたい…みんな、あたしのせいなの

 やがて、懐中電灯か何かだけを光源にして、真っ暗な中に女の子のでかい顔が上半分だけ出てくる。焼きイモ屋のおやじみたいな帽子をかぶって泣くじゃくり、鼻水もダラダラ垂れ流し。

 最後に「怖い〜」と言ったところでどわ〜んと音がして、タイトル「THE BLAIR WITCH PROJECT」が現れる。

 見た後、必ずイヤ〜な気分になることうけあいの、何とも気色わるい予告編である。 

 まあ彼女の言ってることは尾藤イサオの歌とあんまり変わんない。だ〜れのせいでもありゃしない〜ってやつ。リバイバル・ヒットしたときには尾藤イサオ、まるでトラボルタみたいな白いスーツ着てた

 しかし、「ブレア・ウィッチ」だんだん日本でも話題が盛り上がってきて、ホームページも本も出てきて、あとは映画を見るだけって状態。こうなると、あおるわけじゃないけど早く見たいのが人情だ。

 そんな私の気持ちを知って、本サイトの特集にも何度か参加いただいた映画ファンのHideさんが、私を試写会に誘ってくれた。正直言って試写会はもう20年ぶりぐらいじゃないかい。うれしいにゃ〜。

 

 で、肝心の映画だけど、これは映画評とか感想とか述べるような作品じゃあないね。ではつまんないかって? あなたはロズウェル空軍基地で撮影されたって触れ込みの、宇宙人の解剖フィルム見てつまんなかった? いやぁ、楽しんだはずだよエンタテインメントとして。これも同じ。

 お話というか、概要はもうみんなよーく知っている通りだよね。映画学科の大学生3人が、ブレア地区の魔女伝説を追ったドキュメンタリーを撮ろうと、現地にでかける話。それを本当にドキュメンタリーとして撮ろうとしてるのが凄い。え? そんなのあたりまえ? それが難しいんだよ。

 基本的にカメラは2台。1台はだいたいヘザーって監督の女の子が回してる8ミリビデオカメラで、この映像はカラー。彼女は自分の「ブレア・ウィッチ」映画のメイキングをつくろうとしてる設定だ。もう1台は彼女たちがつくろうとしてる映画のためのフィルム撮影用のカメラで、だいたいカメラ担当のジョッシュってのっぽの男が回してる。これがモノクロ。この使い分けがデタラメでなく、キチンとなされているのが凄いんだ。誰がどのカメラで撮っているのか、ちゃんと筋が通ってる。で、どちらもスタンダード・サイズの画面だから、映画はビスタサイズのフレームながらずっと真ん中の部分だけスタンダード・サイズとして使用してるのみ。フィルムの左右はずっとブラック・アウトの状態になったままで、一瞬たりとも光が入ることはない。

 この映画の怖さとリアリティを出すのに貢献しているのがサウンド。何しろ映像のほうは先に触れたように、いわゆるきれいな画面とは無縁。で、サウンドはというと、なぜかドルビーSRなんか使って、かなりいいのだ。しかし、これも一般的に言われるいい音を捉えているわけではない。ノイズなんかもナマナマしく入れて、臨場感を醸し出すためのもの。遠くの怪しげな物音、叫び声、笑い声をシャープに捉えて、怖さを倍増させる作戦だ。しかし、設定としては学生の自主映画として撮ってた素材から再構成したものということになってたのに、デジタル・サウンドってのもヘンじゃない?…と思ってたら、劇中で彼らが録音用に小形DATテープレコーダーを持っていってて、3人目のマイクって爆笑問題のずんぐりむっくりした方みたいな男が録ってることがさりげなく述べられる。なるほど、元々最初からデジタルで録音してるから音がいいのもあたりまえなわけね。

 こうしたうまいウソのつきかたは随所に見られて、例えばこんなにカメラ回しっぱなしでよく電池がもったな…って観客に怪しまれる前に、「私たちは小さな国なら1カ月はもつくらいのバッテリーを持った」なんてセリフを言って、アリバイをつくっておく。だから誰も怪しまない。…だけど、そんなにバッテリーをどうやって持っていったんだろう?なんて疑問は、映画を見た帰り道でもなかなか思いつくもんじゃないよ。

 だいたい、うまいウソをついていくっていうのは、元々映画づくりの基本じゃないか。「スター・ウォーズ」で宇宙船の模型がみんな油汚れやら何やらで汚くなっているのも、真っ赤なウソのリアリティ。うまくウソをついて騙してもらいたいというのが、映画ファン共通の願いだよね。

 だから3人だけしか出ない映画で撮影者もこの3人なのに、彼らを3人とも捉えた映像が入っているなーんてシラけるショットもない。あたりまえだと思うだろ。でも、これまでは大体そういうのちゃんとできてなかったんだ。昔テレビでやってた川口浩探検隊じゃあ、原住民の腕に腕時計形の日焼けがあったりする。こいつら文明を知らない野蛮な連中じゃなかったの? 前人未踏の地に踏み込んでいく探検隊の姿を、「前から」捉えたショットが入っている。このカメラマンは誰? 突然吹き矢が飛んでくると、その吹き矢が刺さる場所に正確にカメラが向けてある。ピントもバッチリ。どうしてそこに吹き矢が当たるってわかったの? 大体ちゃんとカット割してるってのはどういうわけなんだよ。みんながヤラセ映像にすぐシラけちゃったのは、ウソが見え見えになっちゃうから。でも、この「ブレア・ウィッチ」は、ひょっとしたら映画史で初めてウソをキチンとつき通したイカサマ・ドキュメント映画じゃないか?

 しかし、この映画凄いところは、実は最初から最後まで凄いものが何一つ写らないってことね。山登り支度の3人が森の中でウロウロするだけ。正直言って他に何にも出てこない。この映画、制作費が何百万円単位でできたことが凄いって言われているけど、私に言わせりゃこの映画で何百万円もかかったほうが凄い。だって、3人の若い奴と森だけだよ。あとリュックサックとテント。こんなの京王線に乗って高尾山あたりでチョコっと撮れば5万もあればできそうだ。で、こんなあたりまえのモノしか写らない映像なのに、これが怖いんですよ。それはさっき言ってたようにホンモノみたいだから? その通り。人物のリアクションに実感こもってるから? それもそう。それに付け加えるなら、あまりよく写ってないのもいいかもね。何だかわかんない場面が結構あって、おいおい今どうなってるんだという不安感がどんどん増してくる。それについての説明もことさらない。だって現実ってそうじゃない。

 最初意気揚々として張り切っていた彼ら。森に入るまではいい調子なんだけど、森に入ったとたんに道に迷ったらしいってわかるのがミソ。女の子の監督がリーダーとして仕切らなきゃと頑張って、自分が地図見てるくせに道に迷っちゃったって断じて言わない。映画も完成したいしね。だけど、どうしたってウソはつき通せないし、みんな煮詰まってくる。おかしくなってくる奴もいる。このあたり、集団で何かやったことのある奴だったら誰でもおぼえがあるだろうし、描写も奇をてらったものじゃなくリアリティがある。ブレア・ウィッチなんか一瞬も出てこなくたって、人間どおしの疑心暗鬼や対立のほうがずっと恐ろしいわけね。一人一人の性格にそれぞれ人間的な問題があるのが見て取れるのも、いかにもありそうなんだよなぁ。俺なんて真っ先にフテくされてあの爆笑問題のずんぐりむっくりモドキの奴みたいになりそう。

 でも、かなりヤバくなってきてるのに、まだ木の枝でつくった人形なんか撮影したりしてるんだから、監督の女の子もわかってないというか、カツドウ屋バカ一代というか。だから結果的に一代で終わっちゃいましたね(笑)。

 夜は夜で、何だか変な物音とか笑い声が聞こえてくるし。でも、どうすることもできない。ある時何かがテントに襲いかかってきて、ひえ〜ってみんなで逃げ出す場面があって、もうカメラがブレるブレる。何写ってるのかわかりゃしない。これじゃあまるで深作欣二だぜ。って「仁義なき戦い」の手持ちカメラでの撮影のこと言ってんの? そりゃあそうだよ、相手は魔女だ。仁義なんか切ってくるわきゃーないわな。

 昼は南にずっと行こうが東にずっと行こうが、元いた場所に戻って来てしまう。こりゃ焦るよね。

 そのうち夜中のうちにのっぽのカメラマンがいなくなる。いくら探してもいない。ある夜、どこか遠くから彼の悲鳴らしきものが聞こえてくるのも、何とも趣味の悪い趣向だ。そして翌朝、テントの外にまたしても木の枝でつくったカゴみたいなものが置いてある。ここの魔女は何でも木の枝だ。高原の小枝は大切にネ。そこで監督の女の子がよせばいいのに、こわごわこのカゴを開けてみて…ぎゃーっ!って、見てる我々には彼女が何を発見したのかよくわからない。でも、カゴをいじった彼女の手は血で汚れちゃったし、何だかカゴの中を見てみると、よくわかんないけど“こてっちゃん”みたいなものがいくつか入ってるぞ。あれは耳か鼻か、はたまた指か? でもホントにこてっちゃんみたいだな。山田まりやなら「家族のスタミナ!」とか言ってパクッて食べちゃいそう。でも、この女の子はひ〜ひ〜言って手を洗いにいきました。

 まぁとにかく一事が万事こんな調子で気色悪いんですわ。それで、強気一本槍だった彼女もいよいよ話が終盤になると、予告編にあったように「みんな私のせいなの」って泣き出すんだけど、今さら後の祭り。みんなおいら〜がわるいのさ〜って言ったって、尾藤イサオだって出てきやしない。ここはブレアの魔女の里。

 そして、ついに…って、このラスト近くの気味悪さったらないですよ。言っとくけど怪物なんか出ませんからね。ショック描写もなし。カラスも飛んでこないしコウモリも出ない。それで怖いんだよ。そして何ともイヤ〜な後味が残る。たまんないね。

 今まで映画いろいろ見てきて、うまくやったな〜って思ったことも何度かある。コロンブスの卵だと思えたことも。だけど正真正銘、こりゃあ凄いと思えたことは、実はこの映画が初めてじゃないか? だって、誰でもできそうなのに、誰もやらなかったことをこいつらやってのけたんだよ。

 傑作だとか感動したとか、つまりあたりまえの映画の感想をこの作品に見いだそうとしても無意味だね。この映画が好きか嫌いかを問うてみるのも難しいと思う。とにかく、ここにこうした映像がある。ただそれだけ。問答無用。

 とにかく、映画にまだまだ未開の部分が残されていたのには感動だね。100年を過ぎて新たなミレニアムを迎えようとしているこの時期にさ。映画ってひょっとしたら衰退の道を歩んでいるんじゃないか、もう終わりなんじゃないかって、魔女の森を歩いていた3人の学生みたいに漠然と不安を感じていた私だけど、この映画を見終わった今ならためらいなく言える。

 映画の未来って、まだまだこれからじゃないかってね。

 

 

今回の記事を書くにあたって「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の試写会に連れていってくださった、Hideさんにここで改めてお礼を申し上げます。

 

 

 


 Jump to :

 OVERVIEW 作品の概要

 

 WORLD REPORTS 世界ホラー映画紀行

 

 MEDIA MIX メディアミックス

 

 OTHER POINTS OF VIEW 新たな視点

 

 

 

 

 to : Review 1999

 

 to : Classics Index

  

 to : HOME