「ロック、ストック

 &トゥー・スモーキング・バレルズ」

 "Lock, Stock and Two Smoking Barrels "

 (1999/09/26)


しょーもないおバカ4人組

 何だかんだ言って、イギリスの景気は最悪かもしれないが、イギリス映画界の景気はというと、こりゃ最近うなぎのぼりじゃあないかな。中にはブームのどさくさにまぎれて一儲けたくらむ駄作も混じってはいるが、まぁおおむね面白いものが多いよね。

 特に「トレインスポッティング」以降、イキのいい若い奴がウロウロ出てくる小品に拾いものがある。そう、これもご多分にもれずそんな1本だ。

 だが、正直言って見るまでは決してこの映画いい印象ではなかったのダ。特に予告編見たときにはなおさら。いかにものロックとかバンバン流して、若い奴が世の中なめきってヘラヘラ笑いながら犯罪に手を染めてオーケーなんて話だろ、ケッ! 大体私は「ラン・ローラ・ラン」のローラの恋人みたいに汚ねえ金稼ぎしやがって、そのあげく自分がヤバくなると女に助けてくれぇだとか、強盗やるぅだとか言うような若い奴が大嫌いなんだ。

 ま、とにかくだ。そうは言っても「ラン・ローラ・ラン」は面白い映画だったではないか。そうすると、この際余計なことには目をつぶって、この英国野郎たちにもつき合ってみる価値あるんではないか。

 お話は主人公になるお仲間バカ4人の紹介から始まる。ギャンブラーとしてなかなかの腕の奴、盗品商売に手を出してる奴、ヤバい橋は渡らないがセコい奴。いずれにせよ大した奴らじゃない。最初のうちどいつがどいつか、顔の見分けもつきにきかったし、正直言って脚本も演出も彼らを魅力的に描き分けしてなんかいない。第一、先に「ギャンブラーとしてなかなかの腕」なんて書いた奴にしたって、その自慢のギャンブラーの腕を見せることなく、開巻まもなくボロ負けしちゃうくらいだし。

 そう。これが物事の発端だ。このバカ4人、頭も度胸もないくせに金儲けの野心だけはある。有り金はたいてギャンブラーくんの腕に賭けたわけだ。相手は根っからのワル・ヤクザのハリー。結果的にビックリするくらいカモられてボロ負け。50万ポンドの大借金こさえてしまう。一週間後に返済しないと指はつめられるわ、ギャンブラーくんの親父(これが何とスティング! 親父役だぜ。)のやってるバーは取られるわってこりゃあもう大騒ぎ。

 いや、大騒ぎしてない。一応困ってるとは言ってるよ。でも、深刻に考えてるとは到底思えない。こいつらどこまでもバカ。「ラウンダーズ」のマット・デイモンの知性も悩みも何にもない。ついでに言えば魅力もない奴らなのであった。

 そこへ平行して、ヤクザのハリーが骨董モノの鉄砲ほしさにチンピラにコソ泥まがいのことをやらせたり、お坊ちゃん連中がマリファナ製造してたりってエピソードがパラパラ入ってくるんで慌てだしくっていけない。一人一人の顔も覚えられていないのに。それに、考えてみるとどいつもこいつも、ブチ殺されたって構わないような連中だよな。

 で、例のバカ4人が考えた打開策ってのがまたボロい。たまたま立ち聞きした、隣の部屋のヤバい連中のマリファナ強奪計画を、そのまんまパクっちまおうぜという安易な計画。おいおい、そんなんでうまくいくと思ってるのかよ?

 

ドミノ倒しの不条理ストーリー

 こんな行き当たりばったりの主人公たちと脚本にトホホな心境。おまけに「トレインスポッティング」なんかでもいろいろユニークな画づくりが行われていたように、ここでも一応カメラや演出でいじくろうとしてる。急にストップモーションやらスローモーションになったり(ついでに「マトリックス」みたいに飛ぶんじゃないかと思ったよ)、画面が2分割になったり、コマ落としやら何やら…それらのすべてが効果をあげてるかと言えばそうとは言い難い。単なる思いつきで実行されたと思われるテクニックもある。そういうのって新しい感覚だって言いたいのかい? いんや。そんなことマーティン・スコセッシやブライアン・デ・パーマが、もう20年も前にもっとうまくやってることだぜ。何だか田舎の高校の映研みたいなテク使ってダセー!

 ここまでくると、私がこの映画をボロクソこき下ろしたあげく、つまんないと言いたがっていると思うでしょ? 確かにここまではそうだったんだ、ここまでは。

 ところが、この4人の借金返済のためのヤバい橋渡りから、急にドミノ倒しのようにナンセンスというか不条理というか、唖然呆然のストーリーが展開していくのである。もう、その鮮やかさって言ったら信じられないほどだよ。開いた口ふさがらない手際の良さ。…そして、そのたび死人の山ができる。

 でも忘れちゃいけない。先も言った通りこいつらどいつもこいつもブチ殺されたって構わないような連中なんだよ。だから、我々はただただその不条理そのものの状況を見て、大いに笑っちゃっていい。そして、最後まで無傷なのは、あのバカ4人と借金取り立て屋…。

 なあんだ、結局この映画はこのバカ4人を甘やかして終わっちゃうのかよ。世の中チョロいとか言って…。そう思ってたら、ホント苦笑しちゃうようなショボい幕切れが待っている。これがまたいいんだよね。

 「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」は、何ともショボくてアホな、愛すべき快作。トム・クルーズは、これのリメイク権も買ったそうだが、彼はどの役やるつもりなのかな? あのギャンブラーくんかも? うん。クルーズって「青春白書」から「アイズ・ワイド・シャット」に至るまで世の中ナメきってヤバい橋を渡ったあげく、どうしよー?って青くなる役が十八番だもんな。意外と適役かもよ。

 

 

 

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