「ファミリー・ゲーム/双子の天使」

 "The Parent Trap"

 (1999/08/29)


なつかしハリウッド映画再生産

チャールズ・シャイヤーとナンシー・マイヤーズは、いつも二人で脚本を書いて、シャイヤーが監督、マイヤーズが製作に回るというかたちで映画をつくってきたハリウッドのおしどり夫婦。その最大ヒットが「花嫁のパパ」で、これは名作「花嫁の父」のリメイク。これに限らず、二人の作品系譜をたどると、「赤ちゃんはトップレディがお好き」や「アイ・ラブ・トラブル」など、リメイクであるとないとに関わらず、古き良きハリウッドのロマンティック・コメディ、ホーム・コメディの再生産をめざしているのは一目瞭然。そんな二人が今回放つ「ファミリー・ゲーム」は、だからエーリヒ・ケストナーの有名な児童向け小説「ふたりのロッテ」の映画化作品であることは間違いありませんが、むしろここではシャイヤー&マイヤーズの作品群のつながりから見て、かつてディズニーがこのケストナー作品を映画化した「罠にかかったパパとママ」のリメイク作品と見るべきでしょう(原題は同じ"The Parent Trap"だ)。そして、今回はいつも監督の夫君シャイヤーが製作に回り、細君マイヤーズの初監督の内助の功に徹しているのがご注目。さて、その結果は?

 

大西洋をまたにかけた展開

 健康的カリフォルニア・ガールのハリーが、自分とそっくりの英国人のお嬢様アニーとガールズ・キャンプで出会い、いがみあって、あの手この手で応戦するくだりの楽しさは、ワン・パターンと言ってもやっぱり楽しいものです。このくだりは原作のケストナー作品ともあまり変動はありませんが、片や典型的アメリカン、片や気品と伝統の英国人気質という映画での描き分けは、実にうまい設定ですね。ヨーロッパ、ことに英国に弱いアメリカ人の心のツボを押さえた好脚色の見本です。そして国際化時代の現代だからこそ、こんな設定ありえない話じゃない。間に大西洋を置くくらい二人を引き離さないと、この二人が何とかして両親を元のサヤに収めようとする切実さが、観客には届かない。両親が別れて離ればなれの子供たちなんて、いまや当たり前なほどいるもんね。逆にこれだけ離婚夫婦、崩壊家庭がザラになってしまったからこそ、この映画も別の意味でのリメイクの意義が出てきたと言えるんですけど。

 あんまり悪さをして暴れまくった二人が、他の子と引き離され、離れの隔離キャビンに二人きりで過ごすことになって仲直りするくだりも、ちょっとシンミリしていい感じ。この映画は、ドラマの端々でこんなおっとりとしたコクというか、品の良さを感じさせるところがあって、そこがいいんですね。

 自分たちは同じ両親の間に生まれた双子であると確信した二人は、両親のヨリを再び戻らせるべくお互いを取り替えて大西洋の東西に別れるって設定は、みなさんよくご存じですよね! 

 それにしても、この二人がそっくりって設定、まさに映画にぴったりのビジュアル的な設定ですよね! そこに「スター・ウォーズ」「ジュラシック・パーク」で急速発展を遂げたハリウッドのSFX技術が手を貸して、ホントに凄いことになってるんです。若いみなさんにはあたりまえのことかもしれないけど、合成画面にギザギザの切れ目境目が見えないって、大変なことなんですよ! この最新技術と、主役の女の子リンゼイ・ローハンの芸達者ぶりに、見ているほうは主役が実は1人だなんてこれっぽっちも考えが及ばない。この子はホントに凄いです。いちばんのSFXは、このローハンちゃんかも

 東西に散った二人のうち、まずロンドンに行ったハリーのほうから描くのは、アメリカ人観客がこの子といっしょになって初めてロンドンを見て、わくわくドキドキした高揚した気分を出すためなんでしょうね。「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」ならぬ「アメリカンガール・イン・ロンドン」。お約束のビートルズの「アビー・ロード」ジャケットのパロディまで見せて、アメリカ人のイギリスへの憧れを全面に出した展開で、このへんの作戦も見事です。

 

今回のリメイクのポイントはここ

 ところがお父さんのほうには婚約者が登場して、作戦の前途に早くも暗雲たれこめる。今時の尺度から考えると、主人公の女の子が新たな婚約者の女性を撃退すべくいろいろ策を弄するのも、親の再婚話を邪魔する陰険なガキと受け取られかねないのだけれど、ここではこの婚約者の女性を「101」でグレン・クロース演じたクルエラになぞらえるくらい、思いっきりカリカチュアライズしたキャラクターにして難を逃れる。

 さらに、離婚あたりまえ、子供のために親が犠牲になるなんてナンセンス、例え何があっても家族一緒が幸せなんて時代遅れの倫理観…という考え方が浸透してしまった現代に、「ふたりのロッテ」の世界をそのまま持ち込む訳にはいかない。だから、かつては双子の女の子が両親を引き合わせてハッピーエンドになったのかもしれませんが、今回はそこからが長いという仕掛けになって来るんです。下手に無理矢理夫婦を元のサヤに戻そうとしたら、フェミニストの団体とか怒りだしそうだし(笑)。

 だから愛し合ってるけど、それで仲が戻るほど世の中甘くない…なんて、ちょっとした苦みも入ってます。まあ、最終的に脚本はうまくやったと言えるんじゃないでしょうか。後味の爽やかさは近来まれに見るほどです。

 今回の脚本は、前作「罠にかかったパパとママ」のデビッド・スウィフトを筆頭に、マイヤーズとシャイヤーの名が並ぶクレジットとなっています。これから見て、本作の基本設定はかなり前作を踏襲していると思われます。今回の映画化に際してのマイヤーズとシャイヤーの加筆は、おそらく離婚夫婦あたりまえの時代に違和感ないように物語をつくりなおさねばならない後半部分に重点が置かれたのではないでしょうか。

 出演者では、何と言っても主人公を演じたリンゼイ・ローハンでしょう。先にも触れたように、小さくても芸達者。何より可愛いです。この話、結構ひどいイタズラの場面も出てきますから、可愛くて許せちゃうってのは結構重要なポイントです。そして、両親を演じるのはデニス・クエイドとナターシャ・リチャードソンという、私好みのキャスティング。デニス・クエイドはとても魅力的な男性スターなのに、今ひとつ人気が爆発しない。上げ潮になったときの出演作品が不発だったのが痛かった。今回も彼の魅力は全開で、この作品あたりを足がかりにスターダムへ再挑戦してもらいたいものです。ナターシャ・リチャードソンは「101」のジョエリー・リチャードソンと姉妹で、お母さんヴァネッサ・レッドグレーブの凛とした美しさを受け継いでいる女優さん。過去の出演作でも美しくてやさしくて、頭がよくて品がよくて脱ぎっぷりもいい…と、こりゃー男にとってまさに夢の女(笑)! さすがに今回脱ぎっぷりのよさは披露しないものの、酔っぱらっちゃってベロベロの場面など、こんなすてきな女優さんなのに結構バカやってて好感持てます。わかってるよなぁ。シャロン・ストーンなんか「スフィア」で知的な科学者、「グロリア」で鉄火肌の女とエエかっこしいの役ばかり演りたがってるけど、こういうさりげない役でバカやってこそホントにいい女なんだけどねぇ。

 ところで「ふたりのロッテ」は、何とこの日本で美空ひばり主演のバージョンが製作されているらしいですね! これもちょっと見てみたいと思うのは、私一人でしょうか?

 

 

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