「オープン・ユア・アイズ」

 "Abres los ojos (Open Your Eyes)"

 (1999/08/22)


プロローグ:現実か虚構か?

 最近、このサイトをつくるようになってから、一度も顔を見たこともない、本名も住所も知らないという友人・知人というのが、どんどん出来てくるんでとまどうことも多いんですよね。特にある特集を準備していたとき、アメリカの大学に3年留学しているという女子大生とコンタクトをとって、原稿を書いてもらう約束になったんです。ところが待てど暮らせど原稿は来ない。結局、その後何度メールを送ってもナシのつぶて状態でしたが、そのうち過去に彼女から来た何通かの電子メールを見ているうち、不思議な気分になってきました。

 まず、この彼女の居場所ですが、ホントにアメリカにいる人がこんな書き方するのかと疑わせる表現があった。具体的には書けないんですが、地名の表記がおかしい。それと、彼女が事前に書いてきた現地の様子というのが、一切具体性を感じさせない、こちらでテレビとか新聞とかから得た情報で十分書けるような内容だったのも、不思議さを増していました。これは文章のうまいヘタではありません。現地で見たことを書けば、おのずからそこには実際に見た人でないと書けない何らかの表現が出てくるはずなんです。彼女はホントにアメリカにいたのか? 実は見栄か何かでそう言ってただけで、だから原稿を送ることができなかったのでは? 第一、この人物は本当に「彼女」なのか? …自分の日常とか現実が、根底から崩れ落ちていく感じ。それは、まさに現代というものが持つ、危ういリアリティというものだったのでしょうか。

 

最近ハヤリの「夢」ネタ映画

 最近、何だか「夢」ネタの映画って多くありませんか? …いや、大変だっと思ったら実は夢でしたっていう「キャリー」の夢オチみたいなやつじゃない。一応、現実とは描かれているんだけど、とりようによっては夢と考えられなくもないストーリー展開の映画。「アイズ・ワイド・シャット」って、主人公夫婦がマリファナ吸ってイチャつき始めてからはずっと悪夢みたいだし、「パラサイト」だって、あれホントにエイリアンが襲ってきたのか、それとも主人公たちの揺れ動く心理の現れだったのか…。まだ、見てないけど近々公開の「マトリックス」もそんな夢ネタ映画らしいじゃないですか。ローレンス・フィッシュバーンが予告編で"Welcome to the Real World"って言ってる。この映画のポスターなんかのキャッチ・コピーは「なぜ気づかない」だけど、そんなこと言われても困る。だって、まだ見てねえもん。

 考えてみれば映画そのものが夢みたいなもんなんだから、どんなジャンルの作品もこういう性格を帯びてくる可能性はある。リアルにつくればつくるほど、ますます夢に近づいてくわけ。

 この作品は珍しやスペイン製。スペインのサスペンスっていったら、「テシス・次に私が殺される」があったな…と思ってたら、これ、その監督の新作なんですって。「テシス」は、大学のキャンパスを舞台にちょっと「スクリーム」思わせる猟奇サスペンスで、なかなか面白かった。ある程度年輩の映画ファンなら、スペインの美少女スター、アナ・トレントが大きくなって登場という話題もありましたが、そんなこと若いお坊ちゃんお嬢ちゃんには関係ないこと。映画もひっそり公開されてましたね。

 

世の中ナメきった若造がドツボにはまって…

 若くて男前で、遺産が転がり込んできたもんだから金もあって…と三拍子揃った主人公セサール(アドゥアルド・ノリエガ)。女なんて食い放題。一度食ったらもう手をつけないってのがポリシー。おい頼むよオレにも分けてくれもう手をつけちゃったやつでいいから…ってのはさておき、万事こんな調子だから世の中ナメきってます。折角、誕生パーティーだって親友が祝いにきてくれたのに、このセサールと来たら、その親友が連れてきたガールフレンド・ソフィア(ペネロペ・クルス)を食いたくてたまんなくなる。おい、おまえの下半身少しは人格ってものがないのかよ? ないんです。女の子だって、結局「顔と金」の二本立てで迫ればイチコロです。可愛そうに親友の彼は酔っぱらってトボトボ帰る。でもムカついてたのはこの親友と、我々観客だけではなかった。

 食い放題はいいとして、食い散らかされたほうはたまったもんじゃない。セサールに食われた女ヌリアは、キレて彼を追い回します。あげく彼を車に乗せたまま、車を壁にクラッシュ! 無理心中と決め込んだ。

 ざまーみろ!

 顔はぐちゃぐちゃ。いくら金があっても、みんな寄ってこない。わかったか若造、世の中は厳しいんだよ。「Welcome to the Real World」!

 でも、ホントにリアル・ワールドなのか? 実はこの映画始まったところから、デジャブみたいなフラッシュバックが多用されている。そして、このあたりから妙なシーンが挿入されてくるのだ。それは精神病院のような刑務所のような場所。そこに顔をマスクでかくした主人公セサールがいて、何やら精神科医みたいな男から尋問されてる。何だって? 人を殺したって…?

 

夢は死ななきゃなおらない

 ぐちゃぐちゃ顔でソフィを追いかけ回すセサール。あんなに意気投合したのに冷たいじゃないか。親友にしたって、どうしておれを避けるんだよ? …って、以前のてめえの仕打ちを棚に上げて荒れ放題。…「なぜ気づかない」

 でも、そのうち夢のようにソフィが自分のもとに戻ってきて、夢のように整形手術の話もまとまって、夢のようにセサールはめでたく顔も女も取り戻したのでした。チャンチャン!ってそんな話にゃならない。悪夢はむしろこれからだ。

 そう、セサールは今、実は目が覚めているのか、これが夢なのかわからなくなってくる。「アイズ・ワイド・シャット」状態やんけ! そのうち、人工冬眠技術を開発した謎の科学者や企業が出てきて、お話はだんだんでかくなる。このままでかくなって、一体どこまで大風呂敷広げて、どこに落とす気なんだろうと思ってたら、まぁ見事に幕を引きましたねぇ。

 実際、自分が目を覚ましてるなんて、自分がそう思ってるからそうなんで、それの判断が正しくないと言ったら、何もかも根底からリアリティを失ってしまうのではないかな? 今回、そうした「夢/悪夢」と現実との橋渡しをするのがパソコンだったのは、とても象徴的な気がする。

 今回こんなにスケールがっちりでかい話を、最後まで投げ出さずに支えきったアレハンドロ・アメナーバル、大した男です。次回作はハリウッドだそうで、めでたいと言うべきか、まぁお気をつけてと言うべきか。ハリウッドには世界のクロサワも殺されかかったからねぇ、罪滅ぼしにあんな晩年になってオスカーくれたけど。そう言えばこの「オープン・ユア・アイズ」もトム・クルーズが権利買ってハリウッドでリメイクだって。待てよ? 「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」もクルーズが権利買ってハリウッド・リメイクって言ってなかったか? 何やってんだあいつ。自分の企画ってないのかよ?

 ともかく拾いものの一作。何でこれほとんど話題になってないのか不思議です。東京国際映画祭でグランプリとったから? あれ嫌ってる映画ファンやマニアって多いし。ここだけの話なんだけど、映画ファンとかマニアってヤな奴も多いよな!って、それオレのことか?

 

 

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