「パラサイト」

 "The Faculty"

 (1999/08/15)


わが青春時代のエピソード1

 ある日、学校に来るとクラスメートがどこか違ってる! 仲良かったあいつも、可愛いあの娘も、憎たらしかったあの野郎も。…私が今を去ること四半世紀前(!)、中学二年生のときに書いた最初の小説はSF小説、それも宇宙人侵略ものの古典ジャンル、ボディ・スナッチャーものでした。これをクラスの連中の実名でやっちゃったのでウケるやらヒンシュク買うやら大変でしたが、今思えばこの題材選択はとても本能的なものだったのでは…と思います。

 映画の世界でボディ・スナッチャーものといえば、この言葉の元になった古典、ジャック・フィニイの「盗まれた町」の映画化「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」がやはり有名。しかしこのネタ、よっぽど映画人に好まれているらしくて、つごう3度も映画になっているんですね。その3度目、エイベル・フェラーラ監督作「ボディ・スナッチャーズ」は、石鹸のラックスのCFにも出てたガブリエル・アンウォー扮する女子高生を主人公に青春映画ふう味付け。これ見たとき、私は中学二年のときに書いた処女SF小説のことを、つい思い出したわけです。

 うまく言えないんだけど、成長期のティーンって自分も周りも日々変化してく気がする。それがうれしいとこもあるんだけど、漠然とした不安もあるんです。年がら年中お祭りみたいだけど、それがいつまでも続くわけないって何となく感づいてるし。大好きだったあの娘が、えっ? いつの間にあいつとデキちゃったの? あんな何も知らない顔してやっちゃったって? …もう、そこにはずっと親しく感じてた彼女ではなく、見知らぬ一人の女がいたりするのです。ぐすっ。お友だちでいましょうねなんて男として一番ツラい言葉でス。

 売り出し中のロバート・ロドリゲスが、これまた「スクリーム」「ラストサマー」で絶好調の脚本家ケビン・ウィリアムソンと組んだ新作「パラサイト」は、まさにこの「ボディ・スナッチャーズ」3度目の映画化の延長線上にある、学園を舞台にした宇宙人侵略もののSFホラーなのです。

 

これがホントのファントム・メナス

 「25年目のキス」じゃないけど、今ふうボーイズ&ギャルズだって、みんなイケイケで楽しんじゃってるわけじゃないんだぜぃ。…って、やっぱりいい歳をして無理しちゃいけません。でも、若い奴らのなりは確かに変わっても、考えていることや置かれている立場ってそんな変わってない気がします。俺たちの頃はもっとマジメだったって? ウソつけ!

 何となく身の置き所がなくって、居心地悪そうにしてる奴だっている。ひょっとしたら、みんなどことなくそう思っているのかもしれない。黙ってるだけで。

 そんな奴らの学園の日常に、ひょっこりヤツらはやってくる。あれ? 何だかいつもと違う。先生が、クラスメートが、学園が、平凡な日常が…。

 そんな中で、普段はまったく交わることなく、むしろ反目しているような数人の生徒たちが否応なく連帯せざるを得なくなる。その連帯の証はヤク! 侵略者である宇宙生物は水を媒介にして繁殖し、水がなければ生きていけない。そこで脱水症状を起こすヤクは大敵…というわけで、彼らは事あるごとにヤクを一発キメて、フラフラになりながらエイリアン退治にのりだすのです。ヤクが自由のシンボルなんて、ウッドストックみたい! 懐かしー!

 中でもだんだん目立ってくるのが、普段はてんでサエないいじめられっ子のSFおたく、イライジャ・ウッドくん。こいつ確かに学園の異変を最初に感知した点でお手柄だけど、調子に乗って「エイリアンもののSF映画はみんな宇宙人の陰謀だ。スピルバーグもルーカスも宇宙人の手先だ」なんてことをマジで言ってちゃ、本当の話もまともに聞いてもらえなくなるよ。しかも、新聞部の部長にしてチアリーダー、美人だけど性格最悪のタカビー女、ジョーダナ・ブリュースターにホの字で、それをまた見透かされてるのが情けない。

 今回の若者グループのメンバーは、この2人に加えてフットボールのスター選手、転校生の女の子、ネクラ娘、キレ者のアウトロー野郎の6人。…そこで、私はある映画を思いだしちゃったんですよね。

 

ルーツは「ブレックファスト・クラブ」にあり

 一時、若者映画の大家として一世を風靡した、ジョン・ヒューズ監督の1985年作品「ブレックファスト・クラブ」がそれです。エミリオ・エステベス、モリー・リングウォルド、アンソニー・マイケル・ホール、アリー・シーディー、ジャド・ネルソン…今じゃ忘れ去られているけど、当時はジョン・ヒューズがらみの青春映画で入れ替わり立ち替わり共演していた若手スターたちが、ほとんどオールスター共演みたいなかたちで出てた作品。キャラも境遇もまるでバラバラの若者たちが、 何かの罰で休日登校を命じられて一日を共に過ごすことになるお話。そこでこのバラバラな連中が連帯を感じていくわけで、ジョン・ヒューズ特有の若者にコビたような単純さが鼻につくものの、ちょっといい話という感じの佳作です。このメンバーというのが体育会系、お金持ちのお嬢さん、ガリ勉くん、ネクラ娘、アウトロー野郎という布陣。ね? 何となく「パラサイト」の若者たちに似てるでしょ? 特に黒づくめで目がパンダのネクラ娘のキャラクターは、まんまパクってると言っても過言ではないです。恐らく、少なくとも脚本のケビン・ウィリアムソンは、「盗まれた町」あるいはその映画化作品よりも、むしろこの「ブレックファスト・クラブ」を念頭に置いているはず。

 正直言って面白いしノリもいいんだけど、それだけという感じだったロドリゲス監督。今回、特に好感持てるこの作品は、やはりウィリアムソン脚本のお手柄と言えましょう。

 確かに学園の他の連中も変わったけれど、恐怖の体験を通じて彼らも変わった。すべてが終わった今となっては、あれは何か夢のような出来事で、すべて彼らの心の中で起こったことかもしれない…。

 これはやっぱりSFホラーじゃありません。青春映画として見るべきですよね。

 

 

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