「踊れトスカーナ!」

 "Il Ciclone"

 (1999/07/25)


 「ライフ・イズ・ビューティフル」に続いて、イタリア映画から思わぬ快作が登場! これは、ぜひとも当サイトをご覧のみなさまにお伝えしなくてはいけません。

 イタリア中部のトスカーナ地方(といっても、私には全然イメージわきませんが)の片田舎を舞台にしたお話。開巻まもなく、この田舎町で会計士を務める主人公が登場。この男、気のいい奴なんだが、女性にはやや奥手というイタリア男には珍しいタイプ(と、いってもイタリア男がみんな助平ってのは、アメリカ黒人がみんなバスケットがうまいとか、日本男児がみんなウタマロ!とか言うのと同じ偏見でございますわね)。でも、小さな町の中で結構楽しそうにやっている。町の仲間たちとか、この男の家族(親父、弟、妹)が、みんな風変わりながら気のいい人物として描かれているから、その人物紹介に追われる前半部分から、もう見ている我々は気分がいい。何だか天国みたいな町なんですよ、ここ。

 さて、お話はスペインのフラメンコ・ダンサーの巡業バスが、主人公のお家に間違って迷い込んできたところから本格的に動き出す。ホテルに問い合わせたら予約は取り消されているし、どうにか家に泊めてくれないだろうかと興行師に頼まれる前に、ダンサーご一行の色気にノックアウトの主人公一家はハナっから泊める気十分。というわけで、この家の居間で早速ミニダンスショーの始まり。すると、ダンサーの中でも一際美人のカテリーナと主人公の視線がバシバシッと合うではないか。

 このお家の人たちは、親父さんからレズの妹に至るまで、みんなどうにかなっちゃう。イタリア映画と言えば、昔「青い体験」って“筆おろし映画”があって(これって映画のジャンルか?)、美人家政婦が現れて家中の男が盛りがついたようになっちゃう話だったが、この映画ではそんな陰湿なエロ話にならず、あくまで節度があるのが微笑ましい。みんな、積極行動に出たいんだけど…出れない。日本人としちゃ、ぐっとこの人たちに共感しちゃうんだなぁ。

 そんなこんなしているドラマの中で、青空の下、回りをひまわり畑に囲まれ、ダンサーたちがスパニッシュ・ポップス(でしょうね、やっぱし)をバックに踊る踊る…という脳天気かつうれしくなるシーンもありまして、この無意味さかげんがサイコーですね。ホント、健康的なお色気ってのをコンピュータ・グラフィックスでルーカスフィルムでつくってもこんなに素晴らしくないんじゃないかというくらいの、ボーゼンとしちゃうのどかさ。

 それにしても我々日本人だけじゃなく、例えばイギリスの「眺めのいい部屋」などを筆頭に、イタリアへ行って開放的になったとか、官能を刺激されたとかってドラマは枚挙にいとまがない。それなのにこのイタリア産の映画では、スペイン人たちが開放的で官能的な人々として、ウブなイタリア人の羨望の的になっているのはおかしいですね。やっぱ、××人はああだこうだっていう定義って、幻想に過ぎないのかねファントム・メナス。

 やがてフラメンコ公演はなぜかお流れとなり、彼女たちは帰らなくてはならなくなる。そこで、カテリーナ嬢にゾッコンの会計士氏、果たしてどうするかってお話になってくるわけですが、どれもこれも泥臭くなく、センスと品のいい程の良い笑い。先にも申し上げた通り、悪人が一人も出ないお話だから見てて気分がいいんです。

 出てる人もつくった人も、全くの無印。知らない人ばかり。全然前評判も聞いてない。何となく予告編が楽しそうだなってくらいの情報しかなかったけど、これこそ「無印良品」! だから多くを語れないし、またこの気持ちよさって言葉にできないですね。語っちゃヤボというものでしょう。とにかくお話も単純素朴、ハッキリ言ってバカバカしい。そのバカバカしさが素晴らしい! ダンスもこれまた素晴らしい!

 監督・主演はレオナルド・ピエラッチョーニ。ロベルト・ベニーニに次いで、また自作自演の新たな才能が登場です。俳優としてもイタリア喜劇らしからぬ、脂っこさや泥臭さのない軽ーい感じが魅力です。これからはもうレオナルドと言えば、なんとかカード振り回してる「刑事プリ…」とかじゃなくて、ピエラッチョーニでしょう!

 それにしても、ヤボったくてうれしい音楽が気に入ってサントラCD買おうとしたら、これサントラ未発売だって!? 信じられない! こんなゴキゲンで音楽命の映画のサントラ出てないなんて。…とにかく「踊れトスカーナ!」、今年の夏休みはこれ1本あれば十分。日本の不快な夏を吹っ飛ばす爽快作ですよ!

 

 

 to : Review 1999

 

 to : Classics Index

  

 to : HOME