「宗家の三姉妹」

 宗家王朝/"The Soong Sisters"

 (1999/04/11)


 私が香港映画に開眼するきっかけとなった映画のうちの1本、私にとってホントに大切な1本にもなった「誰かがあなたを愛してる」。その監督、メイベル・チャンの新作がなかなか来ないと思ってたら、実際、彼女はここ数年の間、新作を発表していなかったらしい。その彼女の新作「宗家の三姉妹」をようやく見ることができた。対照的な立場、生き方で、それぞれ中国現代史の中で大きな役割を果たした三姉妹の数奇な運命を描く大作。この三姉妹に「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」で国際的に脚光を浴びたアクションスターのミシェル・ヨー、「ラヴソング」も素晴らしかったマギー・チャン、ピーター・グリーナウェイの「枕草子」にも出てたヴィヴィアン・ウーが扮する豪華キャスティングがまず見どころ。

 それにしても、この姉妹の存在だけは知っていたものの、こんなに劇的な人生を送っていたとは驚き。この映画を見て、何年か前に公開されたシエ・チン監督の中国映画「最後の貴族」が、やはり中国現代史に翻弄される三姉妹を主人公にしている点、彼女たちがアメリカ留学している点など、この実在の宗家の三姉妹の物語をかなり下敷きにしていることに、ようやく気が付いた。ニブいね〜私も。孫文やら蒋介石なんて歴史上の大人物がバンバン出てくるが、私を含め日本人はこうした歴史を知らなすぎると痛感。また、孫文が日本に亡命していたとは知っていたものの、忌まわしい侵略行為だけでなく、こんなかたちで日本が中国史に関わっていたということも、ちょっと意外な感があった。

 映画自体は深みや味わいなどにやや欠けるものの、スケールでっかい物語を重厚に描ききり、ボリュームたっぷりのご馳走を食べたような満腹感ある大作となった。このかなりケレン味もある力技の演出にはびっくりで、メイベル・チャンの確かな成長ぶりを感じる。それでいて大味な印象を与えないのは、三姉妹の間に流れる複雑な感情をデリケートに描き込めたからで、このへんは「誰かがあなたを愛してる」のメイベル・チャンならではのデリケートな持ち味が生かされているのではないか。岩波ホールでの公開、しかもそこでの記録的な大ヒットとあって、何か妙にアートシアター映画みたいになっているのではないかと嫌な予感がしていたが、見てみれば娯楽映画としてのツボもきちんと押さえていて「面白い」映画になっていたのでうれしかった。メイベル・チャンは健在、それどころかさらにスケール・アップして帰ってきた。

 

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